予約席
  予約席
                                高橋幸良
 登場人物
  日野みこ(学生、マヤの店のアルバイト、幽霊が見える体質)
  南島マヤ(マヤの店オーナー)
  まちこ(マヤの親友)
  ビンセント(まちこの夫、シンガポール人、ホテルの経営者)
  如月ミサ(本名山田とめ子、占い師)

喫茶店「マヤの店」の中
 
 第一幕
 
 アルバイト学生の日野みこが店の制服で現れる
 開店のための掃除やテーブルセッテイングをしている
 ふと何かに気付いたそぶりで、ドアのところへ行く

みこ  (ドアを開けながら)いらっしゃいませ。どうぞおはいりください。
    あ、はい。まだ開店時間まではだいぶありますね…とにかくおはいりください。
    (だれかを促して招き入れた仕草)まだお掃除途中なんで、バタバタしてますけ
    ど…あ、こちらの席でいかがでしょうか? どうぞ。ごゆっくりしてください。
    開店時間まではまだ十分ありますから。
    (掃除を続けながら)お一人でみえたんですか? …そうですか…それはお寂し
    いですね。あ、失礼しました。そんな言い方ないですよね。何かお飲みになりま
    すか? え? 紅茶。そうですね。ここの紅茶はとっても美味しいって評判なん
    ですよ。
    (このあたりでオーナーのマヤが傍に来て見ている)特にオーナーの入れる紅茶
    が評判なんですよ。なにしろオーナーは紅茶インストラクターの資格を持ってま
    すからね。何にしますか? お薦めはアールグレイですよ。癒し系の紅茶です。
    気持ちが疲れてるときにはこれが一番ですよ。え? 私? インストラクターの
    資格ですか? 私は持ってません。パートなんです。え? ええ、できれば私も
    とりたいとは思ってるんです。学校卒業したら挑戦してみようと思ってます。
    一年くらい紅茶協会に通って講習受けたり実技を経験したり、最後には試験があ
    るらしいです。結構むつかしいみたいですけどね。今日は私ので、我慢してもら
    いますからね。私の入れる紅茶もまんざらじゃないんですよ。毎回、オーナーの
    入れ方観察して技を盗みましたからね。オーナーも筋がいいって言ってくれまし
    た。うちのオーナー流の紅茶の入れ方があるんですよ。ちょっと変わってるんで
    すけどね。あ、ごめんなさいアールグレイ切らしてました。変わりにデインブラ
    れますね(紅茶を入れるポーズをとって)こんなになっていれるんですよ。それ、
    ジャンピング
マヤ  まだまだね。(ポーズをとって)こんなになっていれなきゃ
みこ  あちゃあ、マヤさん。おはようございます
マヤ  何?
みこ  接客の練習です
マヤ  (みこが練習していたテーブルへ行き、手で誰もいないのを確かめるように宙を
    掻く)うーん。誰もいない。あたりまえか
みこ  すみません。そこにお客様がきているつもりで、練習してました
マヤ  …ほんとに誰かいるみたいにしゃべってたわね 
みこ  ほんとに誰もいないんです
マヤ  …見ればわかるわ
みこ  (見て)…そうですね(誰かに目で合図)
マヤ  今、目配せした?
みこ  してません
マヤ  私は勘がするどいのよ。だれかいるでしょ?
みこ  いません。見ればわかります
マヤ  (さっとふりかえり)いないわね(首をもどしたとたんにふりかえる)
    気のせいかしら?
みこ  お掃除、だいたい終わりました
マヤ  だいたい?(周りをみまわして)だいたい終わったみたいね
みこ  オープンの看板出しますか?
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