小さいおじさん
『ちいさいおじさん』
女:OL。おじさんが苦手。
男:小さいおじさん。妖精的な存在?
易者:カタコトの占い師的な人。
課長:セクハラ上司。
声:女性社員の声。
照明がつくと女が電話をしている。
女「──うん、うん、いや、わかってるよ。私だってそんなのわかって言ってるの。
は? 何その言い方。いや、ほんとわかんないんだけど。
は? お父さんには関係ないでしょ? うん、じゃあもう切るね」
電話を切り溜息をつく女。
シュークリームの箱に手を伸ばす。
女「あれ、買っておいたはずのシュークリームがなくなってる……。誰か、食べた?」
サラリーマン達が舞台上を歩く。
ガタンゴトンと電車の音。
照明がつく。女は満員電車に揺られている。
周囲にはおじさんがいて、明らかに不快な顔。
プシュっと電車の扉が開き、女が外に放り出される。
女「私はおじさんが嫌いだ。
満員電車でのあの臭い、汗と脂にまみれた顔、ときどき感じるあの視線。
ほんと、この世からおじさんなんてみんな消えて無くなればいいのに」
男「消えて無くなればいいだなんて失礼な! 我々おじさんだって、必死に生きているんだぞ!」
女、椅子に座り、机の上を凝視する。
目を擦り、我が目を疑う。
そこには、小さいおじさんが立っていた。
女「ちょ、ちょっと、なにこれ・・・小さい、おじさん?」
男「小さいとはなんだ小さいとは。
大人の男に向かって、小さいだなんて言うもんじゃないぞ、お嬢ちゃんよ」
女「いやいや、ちっちゃいよ。え、え、ええっ?」
易者「あーそれはアレね。小さいおじさんね」
女「いやいや、小さいおじさんって都市伝説的なアレでしょ?
そんなの現実にいるはずが……」
易者「お客さん、今も目の前に見えるか?」
おじさん、手を振る。
女「います……あなたの肩の上に」
易者「ほっほっほ。これは愉快ね。こういう不思議なこと、たまに起こるのよ。
人間の残留思念の結晶みたいなもの。疲れてるとね、たまに見えるのよ」
女「でも、家のお菓子勝手に食べたりするんですよ」
易者「人間の想い、残留思念も現実の現象に働きかけること、これもアルのよ」
女「はあ」
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