たった一人の白雪姫
たった一人の白雪姫



よる … 作家を目指している女。
しらゆき … 家を出てきて、自分を「白雪姫」と思っている女。




  道端のベンチの上で横になって眠るしらゆき。
  白いワンピースを身にまとって、異質な雰囲気。
  そこに、疲れた顔でよるがやってくる。
  眠るしらゆきを見つけギョッとする。
  チラチラ横目で見ながら一度は通り過ぎるものの、気になって帰ってくる。

よる   あの。あの、すいません…
しらゆき  …
よる   こんなところで寝てたら風邪ひきますよ

  揺り起こされ、やっと目が覚めるしらゆき。

しらゆき  (よるを見て)王子様?
よる   え?
しらゆき  あなたは王子様?
よる   いや、ちがいますけど…
しらゆき  なあんだ
よる   …大丈夫ですか?
しらゆき  んー、大丈夫じゃないみたい
よる   とりあえず、こんなところで寝てたら風邪ひきますし、危ないですし、早く帰った方がいいと思いますよ。それじゃ

  よる、立ち去ろうとする。
  それをしらゆきは引きとめる。

しらゆき  ちょっと、どこ行くの?
よる   どこって、私も帰るんです
しらゆき  私のこと置いてくの?大丈夫じゃないって言ってるのに
よる   だって見たところ怪我してるわけじゃなさそうだし、元気そうだし、それに…、いや、なんでもないです
しらゆき  だから帰るの?
よる   逆に帰っちゃだめなんですか?
しらゆき  だめなことはないんだけど…

  しらゆきのお腹が鳴る。

よる   …お腹空いてるんですか?
しらゆき  まともに食べてなかったから

  よる、手提げをあさって、リンゴを取り出す。

よる   こんなんでよければありますけど、食べます?
しらゆき  私、リンゴって好きじゃないの
よる   じゃあ、いいです
しらゆき  でも、もらってあげる。ありがとう

  よるからリンゴを受け取るしらゆき。

よる   …それじゃあ
しらゆき  だから、待ってよ
よる   なんで
しらゆき  帰る家がないのよ
1/4

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。

ホーム