僕らのやさしい巨人
「僕らのやさしい巨人」


登場人物
・斉木 優(さえき ゆう):若手編集者。
・挽野 暁生(ひきの あきお):年配の教授。
・千藤 香(せんどう かおる):新米編集者。


  小さな理工学系出版社のオフィス。三人分の事務机の上には、そこだけスタイリッシュなパソコンが並び、あとは書類や書籍、文具などが散乱している。
  来客用の椅子に挽野が座って斉木の原稿を読んでいる。斉木は自分のデスクで仕事をしているが、時折挽野の様子を気にする。
  千藤がお茶を淹れてやってくる。

千藤 先生、どうぞ。

挽野 ああどうも。

千藤 すみませんね、もうすぐ帰ってくると思うんですけどね編集長。

斉木 いつもは時間にうるさいんですけどね。来客のときに限ってなかなか戻ってこないんだよなぁ。

挽野 いいんですよ。久しぶりに皆さんの顔を見に来ただけですから。

斉木 僕らも久しぶりに鳩サブレをいただけて嬉しいです。

千藤 あれ私大好きですよ。

挽野 それはよかった。ところで斉木くん。

斉木 はい。あ、何か間違ってました?

挽野 いえいえ、いつもながら素晴らしい編集です。

斉木 ややや、それは先生がいつもちゃんと原稿を送ってくださるからですよ。

挽野 ただね、気になることがあるんですよ。

斉木 気になること?

挽野 私の翻訳原稿をまとめてくれた君の記事はよくできています。補足情報もよく調べてある。

斉木 ああ、いやぁあれはですね。先生に転送してるニュースリリース原文のメールに貼ってあるリンクから取ってきているだけです。

挽野 リンク?

斉木 メールの文面の中で青文字になってるURLですよ。

挽野 ふんふん。

斉木 え?先生知りません?ほとんどのリリースに入っていますよ。

挽野 私はどうもITは苦手でね。

斉木 あの青文字の部分をクリックすると、ネットで詳細な情報が見られるんですよ。え?使ってなかったんですか。

挽野 通りで君に編集してもらったあとは、色んな詳しいことが書いてあるわけだ。

斉木 通りで、先生の原稿はさわりの数行で終わってるわけだ。

挽野 まあ君に補足してもらって私は助かっているわけだから、これからも頼みます。
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