FLY ME TO THE MOON
或いは赤い目の猫
Tell-aholic
戯曲「FLY ME TO THE MOON
或いは赤い目の猫」
Jun-Q
登場人物
a:年若い女。殺し屋。
b:年若い女。標的。
c:病床の男。標的。
1幕
1場
標的となる年若い女の部屋。夜。
舞台上手にベッド。奥に窓。その向こうはどうやらベランダ。
月明かり。
照らされて、bがベッドの上で膝を抱えている。
泣いている?
窓から静かにaが入ってくる。
部屋の明かりをつけて、
a:今晩は。
b:(驚いて)誰?
a:誰でもいいわ、そんなこと関係ない。
b:大声出すわよ。
a:どうぞ。誰にも聞こえやしないから。
b:(大声)
a:(おさまるのを待って)思い切りがいいわね。
b:驚いた?
a:驚いた。
b:驚いて見えないわ。
a:…まあ、いろんな人を見てきたからね。
b:…悔しい。
a:以外と人はみんな普通なものよ。
b:(じっとaを睨んでから、おもむろに、さらに大声)
a:何をムキになってるの。
b:(大声はやがて美しい発声に)
a:……。
b:(少し息が荒い)こう見えても、少しは、鍛えてるのよ。…どう?
a:…何が?
b:驚いた?
a:…そうね、少しは。
b:全然驚いて見えないわ。
a:驚くより呆れてるから。
b:…あんたなんて嫌いよ。
a:そう?
b:どうしてどこからも反応がないのかしら。
a:反応?
b:こんなにうるさくしたのに。
a:だから、無駄だってば。
b:どうして?
a:内緒。
b:…あなた誰?
a:あなた…もしかして頭悪い?
b:何でよ。
a:言ったでしょ、あたしが誰かなんてどうだっていいのよ。
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