CRIME
とある都下の五和銀行、駅前支店。いつもと変わらぬ営業風景。
受付窓口で働く、杉浦香織。
奥の扉から、従業員の男が出てくる。

従業員「集金に行って来ます。」

      と言って出て行く。

杉浦 「次の方どうそ。」

      呼ばれたので窓口に向かう主婦、高木小枝子。
銀行の正面入口から堂々と入ってくる出前の男、飯野秀明。

出前 「まいど〜〜!」

      入って来た瞬間、杉浦の元に向かう飯野。

出前 「香織ちゃん元気だった?昨日ぶりだね〜。今日終わったら、デートしようよ〜。」
杉浦 「ちょっと、出前は裏口から入って来て下さいって言ってるじゃないですか!」
出前 「裏から入って来たら、香織ちゃんに会えないじゃん。」
杉浦 「私は会いたくありません。」
出前 「そんなつれないな〜。」
杉浦 「仕事の邪魔だからそこどいて下さい。」

      躊躇している主婦の高木。

杉浦 「すいません。どうぞ。(飯野にシッシッ)」
出前 「これ置いて来たら戻ってくるから〜!」
杉浦 「結構です。そのまま裏口からお帰り下さい。」
出前 「またね〜。」

      と、裏へ出前を置きに行く。
      高木、出前の男を見送って、窓口に近寄り、

高木 「モテちゃって大変ね。いいわね若いって。」
杉浦 「毎回ウザイんですよ。まったく私のタイプじゃないし。しつこい男って嫌いなんですよね〜あ、すいません。」
高木 「いいの。いいの。」
杉浦 「本日はどういったご用件で?」
高木 「そうそう、口座を作りたくてね。」
杉浦 「ありがとうございます。何か身分証はお持ちでしょうか?」
高木 「保険証でいいかしら?」
杉浦 「結構です。お借りしてよろしいでしょうか?」
高木 「はいはい。」
杉浦 「では、お預かりいたします。少々お待ち下さいませ。」

      奥のソファでは、融資の相談に来ている、坂上登が座っている。
そこへ、五和銀行駅前支店・課長の西脇堅治が、裏からやってくる。

西脇 「どうも、坂上様。すいません、お待たせしちゃって。」
坂上 「いえいえ。」
西脇 「何度も足を運んでもらって申し訳ありません。」
坂上 「いえいえ、こちらこそ無理言って申し訳ありません。」
西脇 「早速なんですが、ご融資の件、問題なく審査の方が通りましたのでご安心ください。間もなく支店長も来ると思いますので、最終的な段階にはいらさせていただきたいと思います。」
坂上 「そうですか、それはありがとうございます。実はこの町は私の生まれ故郷なんですよ。無一文になって、東京に出たんです、成功したら、ここに帰って来ることを夢に見て…。」
西脇 「さようでございますか。あの世界的に有名な会社が、こちらに支店を出すと伺って、私どももご融資のしがいがあると言うもので…。」

      そこへ支店長の前田恒夫がやってくる。

支店長「坂上様、どうも始めまして、当五和銀行、支店長の前田です。」

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