ハートの女王と黒の道化師
【ハートの女王と黒の道化師】
 ・ハート(女。ハートのクイーン。勤勉な女王)
 ・クローバー(男。クローバーのジャック。冗談好き。)
 ・スペード(男。スペードのエース。紳士的。)
 ・ダイヤ(女。ハートのメイド。お節介。)
 
 ハートがステージ中央で椅子に座り書き物をしている状態で開幕。少ししてからスペードが上手から入ってくる。
 
 スペード  クイーン、本日もお勉学をなさっていらっしゃるのですか。
 ハート   スペード・・・。えぇ、私は女王としてまだ知恵がたりていないので。
 スペード  そんなことはありませんよ。クイーンはこの国をしっかりと統治できています。
 ハート   ありがとう。・・・でもね、もし本当に統治できているのであれば、国民がジョーカーに怯えることなんてないのよ。
 スペード  ・・・クローバーですか
 ハート   クローバーがジョーカーだと決まったわけではないわ。軽はずみにそんなこと口にしてはいけない。
 スペード  ですが・・・
 ハート   クロの国と合併した今、私はジョーカーを探し出して国民を安心させる義務があるの。でも、そのために無実の人間を苦しめたら元も子もないわ。
 スペード  ですがクイーン。反逆の道化師はいつでもあなたの命を狙っておられるのです。
 ハート   ・・・スペード。私は心配ないわ。クロの国が無くなって貴方は少し疲れているんだわ。
 スペード  ・・・そうかもしれません。
 ハート   大丈夫よ。私は貴方たちを苦しませたりはしない。アカとクロ、お互いに協力しながら素敵な国を作りましょう。
 スペード  ・・・はい。
 
 スペードがはける。するとハートが再び椅子に戻り書き物を始める。
 
 クローバー (声)おやおやおや、勤勉ですなぁ、ハートの女王様?
 
 ハートの手が止まり、ため息をつく。
 
 ハート   クローバー、どこにいるの?
 クローバー (声)カードの裏側、ですかねぇ?
 
 下手からクローバーが現れる。
 
 ハート   おかしいわね。扉はあちらにしかないはずよ?
 クローバー 扉なんてのは必要ない。アレは『ここを通るべきだ』と思い込ませる思想の穴ですよ。
 ハート   そ。道化師は窓から入るってことね。
 クローバー おやおやおや、まさかハートは私をジョーカーだと?
 ハート   疑うのは嫌いだけれど、心当たりがあるのは貴方だけなのよクローバー。急に入り込んで私の邪魔をして、悪口だけはいてへらへら笑ってまたすぐ消える。ジョーカーだと思われるのは自然なことでなくて?
 クローバー おやおや。クロの国の王子になんてことをいうのです。
 ハート   『元』でしょう?もうクロの国は存在しないわ。
 クローバー 貴方が消したのでしょう。
 ハート   放っておけば消えてしまったものを救ったのよ。
 クローバー そんなことはありません。クロの国は
 ハート   無駄よ。・・・クローバー、あのままだったら確実にスペードもクローバーも消えていたわ。あの内戦に救いはなかった。
 クローバー いや・・・そんなことは
 ハート   現実を見なさい。現に今スペードは
 クローバー スペードだけですよ。クローバーは屈しない。ハートの国は楽ですね?スペードなんかと繋がって自らの血が穢れたことにも気が付かず。
 ハート   クローバー
 クローバー もう、拭えませんよ。あの日の気高きハートの女王は死んだ。アカの血はクロに穢されたのですよ。
 
 クローバーがはける。ハートがため息をつき暗転。再びハートが書き物をしている状態で明
 転。スペードが上手から入ってくる。
 
 スペード  クイーン。
 ハート   あらスペード。
 スペード  ・・・またお勉学ですか。
 ハート   えぇ。・・・クロとアカ、私達にはまだ深い溝がある。それを取り払うために苦労は惜しまないわ。
 スペード  ・・・ですが
 ハート   いいの。女王になった時点で自由は捨てたわ。
 スペード  ・・・でしたらせめて、息抜きをなさってください。こちらを。
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