始まりのヒトコマ
始まりのヒトコマ
芝原 舞(シバハラ マイ)
観月 優斗(ミヅキ ユウト)
本番終わりの舞台。
すでに舞台美術や照明も全て撤収され、何もない舞台はひっそりしている。
ただ一人、観月が舞台にたたずんでいる。
そこに、芝原がやってくる。
芝原 観月さん
観月 ああ、芝原か
芝原 観月さん、打ち上げ行きますか?
観月 うん、行くよ
芝原 ですよね、よかった
観月 芝原は?
芝原 もちろん。行きますよ
観月 そっか
芝原 …何してるんですか?
観月 別に、何もしてないよ
芝原 へえ
芝原、観月の隣に並んで立つ。
芝原 終わっちゃいましたね
観月 そうだな
芝原 どうでした?今日の舞台
観月 それは反省会のときにでもちゃんと話すよ
芝原 今言ってくれてもいいじゃないですか
観月 いや、でもなあ。芝原は今日が一番よかったよ
芝原 本当ですか
観月 こんなタイミングで嘘言わないよ
芝原 ありがとうございます。それにしても、あっという間でしたね
観月 そうだな
芝原 あんなに練習して、準備してきたものが、終わっちゃったんですね…。なんだか、不思議な気分です
観月 俺さ、この瞬間が一番切なくなるんだよね
芝原 え?
観月 舞台終わった瞬間よりも、全部撤収して舞台になんにもなくなった瞬間の方が終わった感じがして、寂しくなる
芝原 …
観月 どんなに情熱注いできたものも終わるんだ、って実感させられるんだよね。終わらないものなんてないんだけどさ。もっと続けばいいのにって、わがままの一つも言いたくなる
芝原 …私も寂しいです。頑張ってきたし、楽しかったから。でも、観月さん。だから私は、終わらせたいです
観月 …なんで?
芝原 終わらせたくないから。ほら、終わらないものなんてないんですよね。なら、きちんと終わりたい。きちんと終わることができたら、きっと、ずっと続くんじゃないかなあ、って
観月 …
芝原 あ、随分と感覚的な話になっちゃいましたね。ごめんなさい、忘れてください
観月 いや、なるほどって思ったよ
芝原 そうですか?
観月 うん。ありがとな。あー、そろそろ行こうか
二人、帰り支度を始める。
芝原 観月さん
観月 ん?
芝原 私、観月さんと一緒に舞台やれてよかったです
観月 俺も芝原と一緒にできてよかったよ
芝原 そう言ってもらえると嬉しいです
観月 よし、おいで
二人、舞台に向かって並ぶ。
観月 無事、終演しました!最後までありがとうございました!
芝原 ありがとうございました!
二人、深く深くお辞儀をする。
観月 よし、打ち上げ行くぞ
芝原 はい!
二人、しゃべりながら帰っていく。
電気が一気に消される。
真っ暗になる。
1/2
面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種
Windows
Macintosh
E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。