Last Night, Good Night


あらすじ
それは、言ってしまえば『眠りが深くなる』という病だった。
彼女が一度微睡みに沈んでしまうとまず数分で呼吸が止まる。次に心臓。
徐々に脳の機能が眠るように停止し、そうなれば再び目覚める事は二度と無い。
なんて事は無い、一度眠れば死に至るだけの、そんな病。
睡眠を奪われた彼女に唯一残された生きる手段は、シンプルなものだった。
ただひたすら起き続ける。
彼女は眠らない。現代医療の力に頼り、意識を覚醒させ続ける。
何時間も、何日も、何週間も、何ヶ月も。治療法が見つかるまで。
そうして3年が過ぎた。その生活にも、もう限界が迫っていた。


登場人物
ぼく 彼女の恋人。彼女の見舞いに来ている。
彼女 ぼくの恋人。睡眠障害で眠る事が出来ない。
先生 病院の医師 性別不問。
●  ト書き


Last Night, Good Night


舞台、放送等にてあらすじが表記できない場合、
冒頭に僕ナレーションであらすじを朗読。

●夜の病室。基本的なものはあるがベッドだけが無い。
 時計があるが針が進んでいる様子はない。22時ぐらい。
 ぼくは寝ている(床でも椅子でもソファでもなんでも)
 彼女がおそるおそると意を決して声をかける。

彼女 っ、ねえ!
僕  ん……
彼女 ねえ起きて。おーい。
僕  ん、ん?
彼女 ……おはよ。
僕  うん、おはよ……ん、いま夜?
彼女 あ、こんばんわだね。あはは、変な顔。
僕  なんだか。すごく悲しい夢を見てた気がする。
彼女 泣きそう?
僕  泣かない……あれ、ごめん。ぼく……何してたんだっけ。
彼女 えっと。私のお見舞いにきて、そのまま寝ちゃったんだよ。
僕  あ……そっか。そうだったっけ……ごめん。よりにもよって目の前で寝ちゃうなんて
彼女 本当だよ。わざわざ私の病室で、しかも私の目の前でよく寝れるね?呆れも通り越しちゃうよ。
僕  ほんと、悪かったよ。
彼女 反省してる?
僕  うん、してる。
彼女 本当かなぁ
僕  本当だって。
彼女 ん。なら許してあげる。疲れてたみたいだしね。……ほら、これ食べる?おなかすかない?(食べ物はなんでも)
僕  んー……食欲ないや
彼女 ……あーっそ。じゃあ私が食べよっかな。
僕  こんな夜中に?太るよ?
彼女 怒るよ?
僕  あれ、食べないの?
彼女 太るから。
僕  冗談だよ。
彼女 なんてね、私も食欲あんまりないんだ。
僕  そっか……?(きょろきょろと周りを見渡す)
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