Next One
『NEXT ONE』
ガタゴトと列車の音。やがて止まり、しばし無音。
発車を知らせるベルがなり、再びガタゴト。
徐々に明るくなる。
列車の中、向かい合った座席に中年と老人、医者が座って話している。
上手より少年が入ってくる。
医者 (少年を見つけて)おや、……ああ、新しいお客さんですか。ほら、久し振りに新しい人が来ましたよ。
老人、中年、少年の方を向く。
三人、三者三様に少年を見つめる。
中年 なんだ、しけたツラしやがって。
老人 まあ、そういうな。ここに来たばかりの時は皆、同じ様なものだ。お前さんだってここに来たばかりは…
中年 いやだねえ、年寄りは。すぐに昔のことを引っ張りだす。過ぎ去った栄光にしがみつこうと必死だね。
老人 フン、年長者を敬う事を知らん、体だけの大人め。頭の中は子供のまんまじゃな。昔にすがっているのは、ここにいる者皆じゃろ。
医者 はいはい、二人共そこまで。あんまりやってると、彼が本気にするでしょう、「中年」さん。彼はまだ、ここがどこかも分からないんだから、いきなりおどすようなまねはやめて下さい。
老人 やーい。おこられてんの。
医者 おじいさんもです。あまり、余計な事は言わないで下さい。
中年 やーい。おこられてんの。
老人と中年、にらみ合う。
少年 あの、ここは…。ぼくは…。
医者 あなた、お名前は?
少年 「少年」
医者 いい名だ。ああっと、すみません、申し遅れました。私「医者」と申します。これから、よろしく。
少年 …はあ。
医者 で、あちらの御老人が「老人」さん。
老人 よろしくな。
少年 …はあ。
医者 そして、
中年、少年に歩み寄り、手を差し出しながら、
中年 「中年」や。よろしゅうな。
少年 …はあ、(手を握らず)よろしくお願いします。
中年 (強引に手をつかみ)よろしくな。
中年、手をふりはらい、不愉快そうに席に戻る。
医者 気にしないで下さい、少し乱暴だけど本当はいい人なんですよ。
少年 あの、ここは…。
医者 ああ、そうでした。ここの事についてお話ししましょうか。まあ、立ち話もなんですからあっちで座って話しましょうか。
医者、元の席に戻る。少年戸惑いながら、後に続く。
医者の横に座る少年。
医者 さて、何から話しましょうかね。
老人 一番古株のわしが話そうか。
医者 そうですね。私が知っている事はみんなおじいさんから教えて頂いた事ですからね。
中年 無駄に長生きしているからな。
老人 うるさいのはほっといて、話を始めようか。まず、まわりをみて、ここがなんの中かわかるかね。
少年 列車…ですか。
医者 そう、正解。
老人 列車といっても、普通の列車じゃない。この列車は魂を運ぶ列車なんじゃ。
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