光と闇の見聞録
【 一 】

 戦国時代を元にした舞台。晩秋。
 深夜。雨照・雨照城、とある廊下。
 舞台中央奥の大きな襖の前にて、金剛兵A、金剛兵Bが松明と薙刀を手に、何かを警戒するように周囲を見回している。

金剛兵A「ドブネズミはいたか?」

金剛兵B「いや。さすがに向こうも警戒しているのか、虫の影ひとつ見当たらねえや」

金剛兵A「前の監督官殿がやられ、今の御方になってから警備が強化されたんだ。あいつらも当然、それは見越しているだろう。すぐには現れないやもしれんな」

金剛兵B「クソッ、小賢しい真似を。正々堂々勝負もできねえのか。汚ねぇ奴等め」

誠菜(声だけ)「はン、笑わせてくれるね。汚さじゃ、この天下の何処を探しても、アンタらの右に出る奴はいないだろうよ」

金剛兵A「何だと!?」

金剛兵B「何処だ!? 出てきやがれ!」

 襖が勢いよく開かれる。
 中から誠菜(マコトナ)、空翔(ソラカケ)、月影(ツキカゲ)、ミサキが、衣装の上からフード付きの黒い外套を被った姿で飛び出して来る。
 誠菜、空翔、月影が攻め手、ミサキは後方で呪符を構えぶつぶつと呟いている。

金剛兵A「なッ!?」

金剛兵B「襖が勝手に開いた!?」

 殺陣。誠菜、空翔、月影、が金剛兵A、金剛兵Bに斬りかかり、金剛兵A、金剛兵Bは空気の揺らぎのみで判断し咄嗟に動くが避けきれず負傷する。

金剛兵A「だ、誰だ、何処に居る!?(松明を振り回す)」

金剛兵B「何処に隠れやがった、何処に……」

空翔「(金剛兵Bの咽喉元に小太刀を当てて)此処だよ」

金剛兵B「うがぁッ(空翔に斬られる)」

金剛兵A「お、おい!? どうなってんだ、どうなってんだよ!? 一体何処から……ぐはあっ(背後から誠菜に突き飛ばされ、真正面の月影に斬られる)」

空翔「ふっふーん。楽勝、楽勝。監督官が間抜けなら、見張りも間抜けだな」

 ミサキ、ふらりと揺れ片膝を付く。

月影「おい、大丈夫か?」

ミサキ「平気です。集中し過ぎただけですから。幻術が切れる前に脱出しましょう」

誠菜「皆、行くよ」

 誠菜、空翔、月影、ミサキ、去る。

 織信(オリノブ)が古文書を持ってやって来る。

織信の独白
『幻想の伝承より百年後――。
  天下は二分されていた。
  力を重んじ、絶対的支配と軍事力で天下統一を企てる金剛国(こんごうこく)。
  和平を重んじ、豊かな環境と円卓の議会で保守を貫く桜華国(おうかこく)。
  両国の境界に位置する攻防の要、かつて炎の龍神と水の精霊に愛された大地、雨照(あまてら)。
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