ゆがんだシンメトリー
〜悪魔の願い事〜


ゆがんだシンメトリー


【登場人物】男、光、翼

【大道具、小道具】箱馬(椅子)2個、携帯電話(ガラケー)、血まみれの大きなノコギリ、
         ノコギリを入れる入れ物(ギターケースや道具箱)、(切断された手首)、
         彫刻刀、包丁

【音響】恐怖を煽る音楽(BGM)、教室のガヤガヤと騒ぐ音 または机を引く音など(雑踏の音)、
    筆記用具が床に落ちてぶちまけられる音、男の声(台詞)、携帯電話が鳴る音(ピリリリリリと高い音がいい)


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【序章】

   ○暗闇の中、

男の声「悪魔は言った。なんでも一つだけ願いを叶えてやる。
    だだし、お前の大切なものと引き換えに」

   ○周囲が明るくなり、男の姿が浮かび上がる。

男「ある少年は言いました。「必ず三球三振を取れるピッチャーになりたい」と。
  悪魔はおやすい御用だと言って、少年に剛速球と変化球とその他モロモロの汚い手段を与えました」


男「少年が投げる球を誰も打ち返せなくなりました。
  確かに、少年は三球三振の最高のピッチャーになりましたが、それではゲームになりません。
  そのうち、誰も彼と野球で遊んでくれなくなりました」

男「結局彼は、大好きだった野球を、やめてしまいました」

   ○男、箱馬を一つ取り出し、舞台上にセットする。セットしながら次の台詞を言う。

男「ある女性は言いました。「大好きな彼とずっと一緒にいたい」と。
  悪魔はおやすい御用だと言って、婚姻届けをとってきて、勝手に判を押して役所に提出してあげました」

男「二人は結婚し、幸せな生活を送りました。しかし、彼女といることが幸せすぎて、旦那は働きに出なくなってしまいました。

  女性は言いました。「どうしてあんたは毎日毎日毎日毎日家にいるのよ。息が詰まる」
  すると旦那はこう返しました。「だって君が、ずっと一緒にいたいって言ったんじゃないか」

   ○男、箱馬をもう一つ取り出し、舞台上にセットする。セットしながら次の台詞を言う。

男「ほどなくして旦那は交通事故に遭いかろうじて命を取り留めたものの寝たきりの生活を余儀なくされました。
  女性は甲斐甲斐しくも旦那の介護を続けながら、一生、幸せに、暮らしました。めでたしめでたし」

   ○男、道具箱を取り出し、舞台の端に置きながら、

男「ある老人は言いました。「人生がなんとなくいい感じになりますように」
  悪魔はおやすい御用だと言って、まあ、ちょっと何をどうしていいのかわからなかったけど、
  なんとなくいい感じにしてあげました。
  老人はなんとなくいい感じになった代わりに、悩みや問題点を正確に認識することできなくなりました。
  まあ、これは成功例かも知れませんね。比較的に」


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