Fairy Melody〜私はピアノ〜
Fairy Melody〜私はピアノ〜
《登場人物》
日向明日香
日向さくら
里見春樹
日向幸作
日向花江
日向倫人
逢瀬八重
朝永薫
pf
PROLOGUE
とある地方都市の郊外。
桜の森を吹き渡る風。
その桜の森の先にある、小さな小学校。
その音楽室に置かれた、古びたピアノ
ピアノの前に、一人の女が座る。
それは、ピアノに宿る精霊・pf
雨が降り始めた気配がしたと思うと、pfがピアノを弾いて歌い出す。
M1
一人の若い男(=里見春樹)が登場。傘を開く。
小走りで出てくる一人の若い女(=逢瀬八重)。春樹を見つける。
春樹、手招きをして八重を傘に入れる。寄り添う二人。
少し離れた場所に、また一人の若い女(=日向花江)が傘をさして登場。誰かを待っているようだ。
そこに、傘をさしたもう一人の若い男(=日向幸作)が登場。花江、幸作を呼ぶ。
幸作が花江の側に行く。暫く楽しそうに話しているが、花江は傘を閉じて、幸作の傘に入る。
また一人の女(=朝永薫)が傘をさして登場。四人を見詰めている。
別の方向から、一人の中年の男(=倫人)が登場。とぼとぼと歩いている。
その後ろから、一人の女(=日向さくら)が傘をさして登場。倫人に追いつき、傘をさしかける。
倫人の表情は虚ろ。さくら、心配そうに倫人を見る。そして、倫人に傘を渡す。
倫人は少しだけ微笑んで、そのままゆっくりと去る。
反対方向からまた一人の女(=日向明日香)が傘をさして登場。さくらを見つけて、傘をさしかける。
明日香とさくら、何かの気配を感じて、見えてはいない春樹達の方を見ている。
やがて、春樹と八重、幸作と花江は、それぞれ相合い傘で去る。
薫、ピアノの側に行き、懐かしそうに見詰める。そして、去る。
雨が止み、曲が終わる。
明日香は傘をたたむ。
SCENE1
明日香 人気の消えた学校の方から、ピアノの音が聞こえた。桜の森を抜けて通ったあの道の先にある、今はもう誰も通うことのない小さな小学校の、もう誰も弾くことのないピアノの音が、風に乗って私の耳に届いた。あれは、誰かの声。あれは、誰かの思い。そんな空耳のような夕暮れ時、私は、懐かしい場所で流れていた、失われた時間と出会った。
喫茶店。
明日香とさくらが向き合って座っている。
さくら 明日香ちゃんが早めに来てくれて本当に助かった。今日雨降るなんて言ってたっけ?
明日香 確立二〇パーセントだったかな。最近当たらないからね。
さくら おばあちゃん、やっぱりよくなさそうだった?
明日香 今日は会えるといいなって思ったんだけど、無理だったね。
さくら 意識、戻るのかな。
明日香 このまま、話せないままって、嫌だな。
さくら よくなるといいね。なるよ、きっと。
明日香 そうだといいな。そういえば、倫人叔父さんどうしてる?
さくら うん、まだ会社休んでる。あんなことがあったから、目が離せなくなっちゃって。今日はお母さんが見てる。殆ど自分の部屋に閉じ籠もっているけど。
明日香 そうなんだ。やっぱり、お見舞い、行かない方がいい?
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