春の稲妻
春の稲妻
長谷川和馬
秋月清十郎
日下部玄三
討手1
討手2
砂塵の舞う、ひなびた旅籠町。
着流し姿の浪人が歩いてくる。腰には徳利を下げ、首には女物の腰巻きを巻いている。
反対側から現れる旅装の武士三人。浪人を取り囲む。拍子木×1
和馬「海坂藩脱藩浪士、秋月清十郎だな?」
清十郎「さて、知らんな。人違いでござろう」
和馬「白々しいことを申すな。俺がお主を見違える筈がなかろう」
笠を外す和馬。拍子木×1
清十郎「ほお?なんだ、お主長谷川和馬ではないか。」
和馬「いかにも」
清十郎「そうであったか。お上も中々心憎い事をなさる。此度はお主が討手に選ばれたか」(笑う)
和馬「おかしいか?」
清十郎「いや、嬉しいのよ。お主と白刃で試合えるとはな」
和馬「おとなしく腹を切るつもりはないのだな?」
清十郎「それこそ愚問」
和馬「ならば…秋月清十郎、主命によりお主を切る」清十郎「望むところ」
BGM1
和馬達が羽織を脱ぎ、刀を抜く。たすき掛けをしている。
清十郎がふいに徳利を宙高く放り投る。気を取られた和馬の部下二人を瞬く間に居合いで斬る。
徳利が砕ける。鬼気せまる笑顔で振り返ると、和馬に刀を向ける。
拍子木×1
清十郎「つまらぬ。巻藁と変わらんな」
和馬「言ってくれる。腕は錆びていないようだな」
暗転。拍子木×2
一月前に遡り、海坂藩日下部道場。和馬が座っていると道場主の日下部玄三がやってくる。
和馬「先生、夜分に申し訳ございません」
玄三「よい。火急の用とはなんじゃ」
和馬「先程藩邸より知らせがありました。昨夜、秋月清十郎が上役を斬殺。そのまま出奔したとの事」
玄三「…たしかか」
和馬「はい、私も遺体を確認しました。あれは間違いなく「連雀(れんじゃく)」を受けた傷と思われます」
玄三「左様か」
和馬「程なく私が討手を拝命し、明朝より探索に出る事となりました。つきましては先生にお願いがございます」
玄三「…連雀か」
和馬「はい、秋月に授けられた、先生の秘剣とのみ聞いております」
玄三「それをお主が破るか」
和馬「破らねば主命を果たせませぬ。清十郎を止められませぬ」
玄三「…やむ無しか。ならば構えよ」
和馬「はい」
互いに木刀を構える
玄三「よいか、連雀とはこういうものだ」
虚実交えた連撃を繰り出す玄三。
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