誓約の王は密やかに歩み
「誓約の王は密やかに歩み」
                作 結城 翼
   
☆登場人物

水木・・・・・・
恭子・・・・・・
森下・・・・・・
田辺・・・・・・
ヤスオ・・・・・
涼子・・・・・・
権藤・・・・・・
相沢・・・・・・
島田・・・・・・
教師・・・・・・
女生徒1・・・・
   2・・・・
   3・・・・
   4・・・・
水木の母・・・・
涼子の母・・・・


☆プロローグ
   
        暗闇。
        律動的で圧迫感のある音楽。併せて、多人数のハッハッハーッというような無声音のかけ声がリズムを刻む。
        複数の人間の走っているような激しい息づかいも聞こえている。
        そうして、圧するように、闇の中から涼やかな声がした。
   
涼子 :メロスは激怒した。必ず、かの邪知暴虐の王をのぞかねばならぬと決意した。

        続いて、テンションの高い台詞のやりとり。
        この間も無声音のかけ声や音楽は続いている。

ヤスオ:王様は人を殺します。
水木 :なぜ殺すのだ。
ヤスオ:悪心を抱いているというのですが、誰もそんな、悪心を持ってはおりませぬ。
水木 :沢山の人を殺したのか。

        水木が中央のベンチにたっているのがぼんやりと浮かぶ。
        周りを複数の人が走っている。汗が飛び散る感じ。
        激しい息切れも感じられる。

ヤスオ:はい、はじめは王様の妹婿様を。それから、ご自身のお世継ぎを。それから妹様を。それから妹のお子さまを。それから皇后様を。それから、    賢臣のアキレス様を。
水木 :おどろいた。国王は乱心か。
ヤスオ:いいえ、乱心ではございませぬ。人を信ずることができぬというのです。このごろは、臣下の心をも、お疑いになり、すこしく派手な暮らし    をしているものには、人質1人ずつ差し出すことを命じております。ご命令を拒めば十字架に駆けられて、殺されます。今日は、6人殺され    ました。
涼子 :聞いてメロスは激怒した。
水木 :あきれたおうだ。生かしておけぬ。

        ハイッと手をたたいて止める涼子。
        音と無声音が消える。
        同時にパッと明るくなる。

?T怒る涼子

        公園。
        後ろに緩やかな階段ともスロープともつかぬものがあり人が腰掛けている。
        中央に赤いベンチ。上手に桜の樹。
        桜の花が舞台の上部を一面に覆っている。
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