パレード
〜蝕〜
『バレード〜蝕〜』
登場人物
畦野(あぜの・男)
錠前屋(女)
骨董屋(男)
桐緒(きりお・男)
アネモネ(女)
神父(男)
佳純(かすみ・女)
1
ある街の一角
街並みは荒れ果て、寂れている
開けた広場は、その街の中心である
アネモネが童話を読んでいる
その傍らに佇む桐緒
アネモネ 昔々、ずーっと昔。私たちは妖精さんと一緒に暮らしていました。妖精さん
は気まぐれで、わがままで、ゆらゆらと落ち着きのない子たちでした。妖精
さんはお祭りが大好きで、よく私たちと遊んでいました。妖精さんと私たち
は、友達でした。しかし、いつしか私たちは妖精さんと遊ぶのをやめ、自分
たちだけで楽しむようになってしまいました。私たちが暮らす、この街の繁
栄も、豊かな生活も、全部妖精さんのおかげだったのに。
妖精さんは、寂しくなって言いました。「どうして一緒に遊んでくれないの」
やがて怒った妖精さんは、小さな悪魔になって、人々にとりつきました。「僕
らを無視するやつらは、こうしてやる」もともと自分勝手だった人々は、も
っと自分勝手になって争い始めました。反省した人々は、お祭りのときは自
らを封じ込めるために仮面をつけて、ただ、妖精さんのためだけに祈りなが
ら踊るようになったのです。カクカク、ヘラヘラ、カクカク、ヘラヘラ。
「ばか踊りだ、ばか踊りだ、あっはっは」妖精さんは、どんどん自分勝手に
なっていきました。
本を閉じるアネモネ
音楽が聴こえてくる
どこか、パレードを連想させるような響き
錠前屋、骨董屋、神父など、街の住人が通り過ぎて行く
最後に佳純がやってくる
誰かを必死に探しているが、見つからない
やがて、去る
アネモネと桐緒が去る
2
荒寥とした広場で、錠前屋が店を開いている
1/24
面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種
Windows
Macintosh
E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。