マゼンタ色の、光の中で踊る。
マゼンタ色の、光の中で踊る。



歩美(27) …かつて舞台女優だった専業主婦
蒼 (28) …未来へ前進する歩美の良き夫
夕 (23) …過去を見やる喪服男。大切な人を次々を失っていく。
歩子(7) …未だ神様のもの。自由に駆け回る少女。
エキストラ  歩行者。10名ほど

※蒼と夕、同じキャストであることを想定しております。が、
別キャストが行っても構いません。



〜幕あがる〜



 信号機の通りゃんせが鳴り響く。
 交差する歩行者(エキストラ)。

 舞台中央には大きな窪みがあり、正方形の白い机、長方形の白い椅子が
 スクランブル交差点のように並んでいる。

 赤と青二色のネオン街。
 歩美が一人、舞台中央の机の上で立ち尽くしている。

歩美「足音のステップ、光り輝く照明、交差するエキストラ、馴染みのBGM。
   セリフは無いけれど、キャストは少ないけれど、事足りていました。
   これで十分でした」

 ランドセルを背負った歩子が、白い椅子と椅子をジャンプし飛び乗る。

歩美「広い広い、広いひろいヒロイヒロイヒロイ舞台にバミリ。ここ。
   ここに立ってさえいれば、何も乱れることなく、
   上手に、上手に、過ぎていきます。
   だからってつっ立っていれば良いって、そんな簡単なものでもないんですけど」

歩美「舞台には危険がいっぱいです。いつ何が降ってくるか分からない。
   危険な装置や大道具に囲まれていますし、
   夢中になりすぎて注意力も乏しくなります。
   けれどそんな中、子役時代はたくさんの方や神様に守られて、
   舞台で演じられていました。 
   しかし、神様のご加護は、もう7つの時になくなりました」

歩美「お父さん!お母さん!歩美はもうすぐ28になります。
   膝丈下のスカートと、淡いベージュのエプロンがよく似合う、28になります。
   小さい頃は、ピンクのふわふわとした可愛いピンクのワンピース。
   着させてくれてありがとう!ありがとう…もう、着れない。
   もう着れないから。もう私は、こんな格好しかできないから!
   …できるのかな…できるんだ。へえ。できるんだ。
   でも私は、店員さんに『よく似合ってます』と言われた服を身にまとい、今日も
   家路を急ぎます。そうです。
   旦那が私の晩御飯を楽しみに、そろそろ帰ってくる時間なのです。」

歩美「今日もあっという間でした。お父さん。お母さん。天国のおじいちゃん。
   今日も1日、あっという間でした」

歩美「青だから、家に帰らないと。
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