『どうやら葬らしい』
『どうやら葬らしい』
【CAST】(♂6・♀4)
姉=政子 兄=和利 妹=千鶴
老女 相原 よっぱらい
農夫 喪服の女性 神父 オヤジ
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(ふほう) (かげやま)
「訃報・あなたのお父様、鹿毛山政利さんが昨日亡くなりました」
■民家の一室。中央やや上手側に棺桶。簡素な葬式のひな段。
■舞台の隅(手前・上手側)に老女が一人、正面を向いてちょんと座っている。縁側でお茶を飲むように。
■荷物を抱えた千鶴が、足早にやってきて部屋にあがる。
千鶴「ただいま〜。・・・お父さん。お父さん!」
■棺桶のふたを開けて父の顔を見る。
千鶴「おとうさ〜ん」
■すがりつくように泣く。
■老女はのんびりお茶を飲む。
■一通り泣いた千鶴が顔を上げ、老女に気がついて驚く。
千鶴「え!?」
千鶴「あの?」
■老女は気づかない。
千鶴「あ、あの?」
■老女は気づかない。
千鶴「え?」
■千鶴は老女の横に来て顔をのぞくようにして声をかける。
千鶴「あの〜〜?」
■老女が千鶴に気づき、笑顔で会釈する。
千鶴「こ、こんにちは」
■老女はにっこりと千鶴を見たまま。
千鶴「あ、あの・・・どちらさまですか?」
■老女はニコニコしたままうなずく。
千鶴「え、あの? あなたは誰ですか?」
■にこにこ。
千鶴「耳が遠いのかな? それともボケて・・・」
老女「ボケてはないの」
千鶴「え! 聞こえてる!? 聞こえてるんですね? もう。あの、あなたは誰ですか?」
老女「え?」
■老女は耳に手を当てて聞き返す。
千鶴「あ〜な〜た〜は誰ですか?」
老女「もう、68になります」
千鶴「歳は聞いてません! っていうか、意外と若いな」
■老女、ニコニコ。
千鶴「あ〜、(周りをキョロキョロ)あの、私の姉か兄が、来てませんか?」
■にこにこ。
千鶴「姉と〜兄を〜・・・らちが明かない」
■千鶴は立ち上がって。
千鶴「自分で捜してきます」
■荷物を持って奥に消える。
■男性(和利)が慌ててやってくる。
■玄関前で表札を確認してから中に入ってくる。
和利「ただいま〜」
■棺桶の前まで来て、
和利「父さん」
■手に触れて、
和利「冷たい」
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