DEAD and ALIVE
「DEAD and ALIVE」


舞台はどこにでもある公園である。中央にはベンチがあり、その近くには吸殻入れが設置されている。


明転。蝉の声が鳴り響いている。ベンチに座っている男1。何か物思いにふけっているようである。上手より男2が出てくる。喫煙場所を求めて、ベンチ横にある吸殻入れの近くに向かう。その途中男1と目が合い軽く会釈。

男2「失礼。一服させていただきますよ」(煙草を取り出す)
男1「あぁどうぞご自由に。ここは皆の公園ですからね。煙草くらい好きに吸ってください」
男2「それではお言葉に甘えて」(タバコを吸いだす)
男1「(再び物思いにふけっている)」
男2「何か考え事ですか?」
男1「え?」
男2「いえ、失礼。何かあなたが思い詰めてるように見えたものですから。」
男1「あぁ分かっちゃいますか…。いえね、大したことではないのですが」
男2「はい」
男1「今の自分のしていることに虚しさを感じるといいますか」
男2「と言うと?」
男1「私ね…、殺し屋なんです」

蝉の声が鳴り響く。

男2「殺し屋ですか」
男1「えぇ」
男2「この時代にまた難儀な職業を選ばれましたね」
男1「おっしゃるとおりです」
男2「しかし、殺し屋といっても儲かるものなのですか?今の時代にそう必要なものとは思えませんが」
男1「これが意外と依頼が多いんですよ。今週だけで10人は殺しました」
男2「へぇ、そんなものですか。うーん、でもなぁ…」
男1「何です?」
男2「殺すって言っても殺せないじゃないですか。一昔前ならともかくとして、今の時代人は死にませんよ?」
男1「そこが問題なんです…。今の時代、誰もが頭にマイクロチップを埋め込まれていて常にバックアップがとられている。例え死んだところで、その瞬間予備の身体に意識が転送される」
男2「技術革新の賜物ですね。人は死への恐怖に怯えることがなくなった」
男1「そう、誰も死なない。それでも私は殺し屋なんです。(携帯が鳴る)失礼します。」

男1、ベンチを離れて電話に出る。男2、言われた言葉の意味を考える。

男2「死なない時代の殺し屋ねぇ…」
男1「えぇ、はい。では予定通り公園でお待ちしてますね(電話を切る)」
男1「(ベンチに戻り)どうも失礼しました。お客さんからの電話だったもので」
男2「お客というと、殺しの?」
男1「えぇ。この後ここで殺す予定なんです」
男2「少し疑問があるのですが」
男1「はい」
男2「殺し屋の客というのは、一体何のために殺しを依頼するのでしょうか?その行為に意味があるとは思えないのですが…」
男1「意味ですか。…私は死んだことが無いのであくまで推測になるのですが」
男2「えぇ」
男1「人は死ななくなったことで、生きているという実感を得づらくなったのです」
男2「生きている、実感ですか」
男1「本来生と死は隣り合わせのものです。死を意識するからこそ生きていることの有り難みを知ることができます。」
男2「しかし、時代は変わりました」
男1「えぇ。人は死ななくなったことで生の価値を軽視するようになった。一生懸命という言葉がありますね。命を懸けて物事に臨む様を言います。果たして今の時代の人間にこの言葉を当てはめることはできるのでしょうか?」
男2「命を軽視しているから、生きるということすらもないがしろにしてるということですね」
男1「そうです。まったく嘆かわしい時代になったものですよ(電話が鳴る)失礼」
男1「そうですか。もう近くまで。…えぇ。…あ、見えました。」

上手より男3が出てくる。

男1「どうもこんにちは」
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