キネ倫
よーい!スタートッ!
キネ倫

■登場人物■
ハジメ(男)脚本家
キヨシ(男)助監督
ヨウジ (男)監督
シンイチ(女)男装した制作 本当の名前はキミエ
ヒロキ(男)キャメラマン
オクメ(女)記録係

マスダ(女)銀行員
サワコ(女)高利貸

サッチャー(女)通訳 日系2世

電報配達(声のみ)
荷物運び(声のみ)
兵士(映像)
コンデ(看板)



ここは京都キネマ会議室。敗戦後、GHQが統治する中、未だにGHQによる検閲が行われている頃。
舞台中央に、コの字型に配された会議机。周囲にはヤカンが置いてあったり、映画のポスターが貼ってあったり。
下手側に廊下に続くドアがある。

■プロローグ■
 幕前。京都キネマの裏手。戦中・戦後をイメージさせる効果音が流れる。ややあって、水の流れる音FI.板塀1枚。ややあって、手に一枚の手書きのチラシを持ったキヨシが上手から出てくる。
 キヨシ、板塀にチラシを貼る。貼ったチラシを見て、ややあって下手に去る。
 チラシには『京都キネマ制作急募 経験不問、経験者歓迎、男性、給料等応相談』などと書かれている。
 キヨシが去った後、ややあって、下手からキミエが出てくる。キミエ、時代を感じさせる女性っぽい服装。チラシの前を通り過ぎたところでチラシに気付いて戻り、チラシをジッと見る。ややあって、チラシを剥がし、上手に戻る。音楽CI。

■第1場■
 音楽FO。京都キネマ会議室。男装したキミエ(以下シンイチ)、ヨウジ 、キヨシが座っている。
 シンイチの就職面談である。
 キヨシ、シンイチから出されたであろう履歴書を見ながら。
キヨシ   「で、この業界での経験、制作の経験は無しと・・・」
シンイチ  「はい。」
キヨシ   「じゃあ、どうしてここに?京都キネマで働こうと思ったのかな。」
シンイチ  「わた・・いえ、僕は以前から映画が大好きで、この業界に興味があったんです。
もしできるなら映画に関わる仕事をしたかったんですが、でも戦争のせいで・・」
キヨシ   「そうか、まあ、大抵の奴がそうだよなあ。監督、どうします?」
ヨウジ   「ええんちゃうか。」
キヨシ   「そんな!(キヨシ、ヨウジ に耳打ち)そんな簡単に決めちゃっていいんですか?」
ヨウジ   「ええやないか。大体やなあ、制作なんて仕事、経験のある奴なんかそうそうおるはずないやろ。」
キヨシ   「まあ、そうですけどね。」
 ヨウジ 、キヨシから履歴書を受け取って。
ヨウジ   「ええと、シンイチ君やったかいな。」
シンイチ  「はい。」
ヨウジ   「な、見てみ?」
 と、ヨウジ 、シンイチの顔を指差す。
キヨシ   「へ?」
ヨウジ   「シンイチ君、人当たりのよさそーな顔、しとるやないか。」
キヨシ   「まあ、そうですけどね。」
ヨウジ   「それが大事なんちゃう?今の京都キネマの制作の主な仕事って、どっかから資金を集めてくることやろ?」
キヨシ   「まあ、そうですけどね。」
ヨウジ   「と、言うことはや、人当たりのよさそーなシンイチ君がピッタリやっちゅうこっちゃ。な。」
キヨシ   「まあ、そうですけどね、一般的には・・」
シンイチ  「ありがとうございます。」
キヨシ   「いや、まだ採用って決まったわけじゃないから。」
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