これからは、そういう『設定』で!
-50分ver.-
これからは、そういう『設定』で!
【登場人物】
神崎:こうざき。この物語の主人公。ものすごい美少女で、めちゃくちゃモテる。
女王様。最近気になる人がいる・・・? という設定。
藤村:神崎の親友。女。常識人でいいやつ。3年くらい付き合ってる彼氏がいる。
神崎の恋愛相談(?)に振り回される毎日。という設定。
山田:熱意がなくて冴えない男。学園の女王である神崎にパシられる毎日。という設定。
持杉:もてすぎ。モテる男。クラスの人気者で、成績優秀。運動万能。顔はそこそこイケメン。という設定。
菊川:世界の改変者。天使とか悪魔とか、そういう感じの設定。なんだか怪しい雰囲気を出している。という設定。
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【第一幕】
【シーン1】
暗闇の中、音だけの世界。
雑踏。
ざわざわとざわつく世界。
神崎の声「焼きそばパン」
音が消える。
照明がつく。
舞台上には一人、山田が立っている。
手には焼きそばパンが握られている。
山田「みなさんは、ぱしりという言葉をご存知だろうか。強い人や偉い人の命令で使い走りする人のこと、だそうだ。まあ、つまり今の俺のことだ。
例えばここに、焼きそばパンがある。ぱしりをやらせている、命令している側の人間は、どうも焼きそばパンを買いに行かせる習性があるのだと最近の俺は確信している。これはある種の儀式のようなもので、ステレオタイプのようなもので、焼きそばパンを買いに行かせることによって、命令する側は、ぱしらせているというアイデンティティを保っているのではないか? と、俺はそう思うわけだ」
人間がうじゃうじゃと出てくる。
制服を着ていたり、ジャージを着ていたり、みんな高校生。
みんなランダムに舞台上を歩いている。
山田「(それなりに早口で)そしてぱしられている人間も、自分が命令に従うことによって己のキャラクターを守っているのでは、と、そう思う今日この頃。とまあ、俺が何を言いたいのかと言うと、ぱしりとして焼きそばパンを買いに行かされている俺は、どうしようもなく作りものっぽいというか、設定じみているというか。世の中にはそういうものがたくさん転がっていると思う。運動が得意だ、甘いものが好き、あの二人は付き合っている。それは先天的な理由だったり、後天的な理由だったりはあるけれど、結果や現象や趣向や関係に、名前がつけられたってそれだけのことではあるけれど、それっていうのは『設定』って呼べるんじゃあないかって」
周りの人間がぴたりと動きを止める。
山田「ちなみに俺の設定は、平凡で、無気力で、どこにでもいるような若者だ。物語の主人公になるような、そんな劇的なタイプの人間じゃあない。だから、今から始まる物語の主人公は、決して俺なんかではなく、一人の女子。女の子。俺はその子の物語のただの語り部だと思ってもらって構わない。ちなみに俺が誰のぱしりかっていうと、その主人公の女子なわけだが。そんなこんなで、物語は、俺が焼きそばパンを買いに行かされている、今この瞬間のシーンから始まる」
はあ、とため息をつく山田。
山田「これからは、そういう設定で。」
突然、音楽が鳴り始める。
激しい感じのノリのいい曲。
いわゆる、オープニングが始まる感じで。
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