サヨナラは雨の日....
☆キャスト
・朝香
・多香子
・慎吾
・犯人
・案内人
・(プラスα)
案内人 雨。空気中の水蒸気が液体となり、空から降ってくる自然現象。ただ、それだけのことしかにすぎません。しかし、雨は私たちにある感情を与えます。それは単純な喜びであり、勇気であり、悲しみであり、寂しさであり、・・・時として、人々を狂わせるのです。さあ、出て来てください。
(20代前半の女性が、ぼんやりとした様子で歩いてくる。)
案内人 あなたは、雨に人生を狂わされました。覚えていますか?
朝香 ・・・・・・。(首を横に振る。)
案内人 あなたは、どうしてここにいるのか、覚えていますか?
朝香 ・・・・・・。(首を横に振る。)
案内人 あなたは、自分の名前を、覚えていますか?
朝香 ・・・・・・。(首を横に振る。)
案内人 あなたの名前は朝香です。高森朝香。
朝香 た・・・かもり・・・?あさ・・・か・・・?
案内人 そう、今から話すのは、雨に狂ったある女性の物語です。
朝香 あ・・・め?雨・・・あああ・・・・あああああ―――――――!!
案内人 では始めましょう。・・・雨は時としてあなたを狂わせる。
(暗転。)
(明転。朝香はソファで横になっている。部屋にはキャンバスがおいてある。ドアの開く音がし、多香子が入ってくる。)
多香子 ただいまー!お姉ちゃん、タオルー!ちょっとお、いないの?お姉〜!!
朝香 ・・・うるさいわね。はい。
多香子 さんきゅ。
朝香 多香子、あんた今日傘持ってったでしょ?なんでそんな濡れてんのよ。
多香子 二人で入ってきたから。
朝香 ああ、由香ちゃんと?
多香子 ううん。へっへー。
朝香 何よ、気持ち悪い。
多香子 先輩といっしょに帰ってきたの。
朝香 男?
多香子 うん。
朝香 そりゃよかったわね。
多香子 あ、冷たーい。もっとこうあるでしょ。
朝香 何がどうあるのよ。
多香子 かっこいい?とか、背は高いの?とかあ。
朝香 そんなこと聞いてほしいの?
多香子 あのねあのね、私すっごいがんばったんだよ。先輩、ぬれて帰ろうとしてて、声かけようかすっごい迷って。
朝香 断られなくてよかったわね。
多香子 うん。
朝香 それにしても、よく降るわね。
多香子 ね。
朝香 雨って最低。
多香子 そ?私は雨、好きだな。
朝香 先輩と相合傘できたからでしょ。
多香子 えへ。まあね。
朝香 ほら、早くお風呂に入らないと風邪ひくわよ。
多香子 はあい。なんか雨の日のお風呂っていいよねー。
朝香 どうして?
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