『大学受験は愛のため』
『大学受験は愛のため』
大葉順子
竹内安江(やすえ)



■ベンチに女の子=竹内安江が座っている。
 受験生らしい、参考書、過去問集などを読んでいる。

■そこにもう一人、女の子=大葉順子が現れる。
 気合いが入ってか緊張か、ズンズンと歩いてくる。

■大葉はちらっと竹内を見て、そのまま進むが、
大葉「ん? あれ?」

■大葉が竹内をじっくり見て
大葉「あれ〜〜〜〜〜? あれ〜〜? あれ〜〜?」

■流石に竹内も気づく。
大葉「あれー 竹内さんじゃん!!こんなところで。何?竹内さんもここ受けんの?」
竹内「うん」
大葉「そうなんだー! 奇遇ですだねー、ぐうきー。ってか意外〜」
竹内「え?」
大葉「バカなあたしと違って竹内さんめっちゃ勉強できるじゃん。だからまさか竹内さんがあたしと同じ大学受けるとはーって感じ? 最も想定外の人物じゃん?ねー。って、ここ滑り止め?
竹内「え。え〜と・・・」
大葉「あ、いいのいいの!あたしにはギリギリ合格っていうか完璧ギャンブルな大学でも、竹内さんには余裕のよっちゃんでしょ。肩ならしにもならないんじゃないの?」
竹内「そんなことないよ、私ここに通うつもりで」
大葉「いいのいいの。いいんでございますのよ。ご謙遜。いやーでも良かったー。東京の大学受けにきて、知り合いも居ないし、どうしよー思って。やべーよ関東進出か!?とか思って構えちゃったよ。竹内さん、東京に来たことある?」
竹内「あるよ」
大葉「私ないねんなー。だから余計に緊張しまくり。昨日こっちの宿に着いてから試験会場の下見に3回も来ちゃったよ。って、竹内さんここ通うつもりなん?」
竹内「え、あ、うん」
大葉「マジでー!?何で何でーなんですか?」
竹内「・・・大葉さんこそ、何で?」
大葉「何でここかって?っていうか何であたしみたいなのが大学受験してんのって感じだよね〜、ホントシャーペンより竹刀って感じだもんね。マジあたしにも分かんない。人生って分からんもんですな」
竹内「あれは、辞めちゃったの?」
大葉「え?あれって?」
竹内「総長?」
大葉「あー、関西スケバン連合のね? そうだね〜、辞めちゃったよー。総長辞めてバリバリ勉強したよー。夜中にバイク乗り回したりして荒ぶってたけどさ、そんなある晩のことでした、関西スケバン連合は大規模集会を開催しました。あたしって怪力だからパワーが超余っててさ、

■照明変わる。2人がスケバン連合モードになる。
大葉「いくぞ、おめーら!」
竹内「おう!」
大葉「まずはご近所を一回りだ、おらーー!」
竹内「おう!」
大葉「で、鍵をひねってバイクのエンジンをon!ドルンってなるはずが勢い余って鍵がバキーー! 折れちゃったーーてかねじ切れたーー!!」
■照明戻る
大葉「・・・そんでスケバン連合は辞めた」
竹内「なるほど・・・。私も同じです」
大葉「いやー、ほんと自分で自分の怪力ぶりに飽きれるわ。さすがに鍵はねじ切らんでしょ、普通の女子なら。そんな女に誰が惚れるかって、竹内さん今同じです言った? 同じ!? って何が同じか?」

竹内「私も総長でした」
大葉「マジで!?何!どこの!?」
竹内「関西ガリ勉連合の」
大葉「何それ何それ!?そんなのあるの!?まず何それ説明求む!?」
竹内「関西の受験生達の中でも、とにかく勉強ばかりの猛者達で構成されています」
大葉「スゴそうヤバそう!マジでそんなエリート団体あるんだね!」
竹内「スゴくはないんですよ。授業ではノートにびっしり書き込み、先生の言葉にうんうんとうなずき」
大葉「いるいる、そういう子、絶対クラスに一人はいる!目の前にも一人いる!」
竹内「家に帰っても夜中まで机に向かい、とにかく勉強ばかりしているけれど、一向に成績が上がらないという」
大葉「あ、成績は上がらないんだ」
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