モノクローム
『モノクローム』

登場人物

ヒカル(女性・たこ焼き屋)



     ある駅の構内 
     多くの電車利用者で賑わい、活気がある

     その一角に屋台を構えるたこ焼き屋「ひかる」
     店主であるヒカルが、元気よく通行人に挨拶を交わしている
     白が強調されたスカーフを、バンダナ代わりに頭に巻いている

     客がやって来る
     高校生のようだ

ヒカル いらっしゃい! おぉ、翔太君か、今日はやけに早いね。まだお昼過ぎだよ。
    何、学校抜け出してまでお姉さんのたこ焼き食べたくなった?
    何さ、その顔。文句あんのか! 誰がおばちゃんだよ!
    こちとらまだ20代だからね? うるっせーな、ギリギリまだだよ!
    ったくもー……。うん? 試験期間中? なぁるほどね、道理でこんな時間か
    ら学生さんが多いわけだ。
    はいはい、6個入りが2つね。妹さんの分? へぇ、良いお兄ちゃんじゃん。

     ヒカル、たこ焼きを作り始める

ヒカル 試験の調子はどうなのさ? 部活とかも返上でしょ? 今から帰ってウチにこ
    もって黙々と勉強たぁ、学生も大変さねぇ。オーイ、目ぇ逸らすな?
    まぁ、社会出て役に立つかとかわかんないけどさ、テキトーにやっとくと後悔
    するよ、私くらいの歳になって。あんまり歳、かわんないけどね。オーイ、清
    々しいまでに顔ひきつってんじゃねぇよ。(焼けたたこ焼きを箱に詰め)ほい、
    お待ちどうさま。(代金の受け渡しをして)はい、ありがとー。(顔色をうかが
    い)ん、どうした、浮かない顔して。別に変なもん入れてないよ、今日は。
    ……え、本当は妹用じゃない? じゃあ何よ?
    ……は!? 彼女!? あぁ、ごめん、大きかったよね、ボリュームが。
    ちょっとちょっと何さ、翔太君、いつの間に! やるねぇ、こいつ! 照れて
    んじゃないよ! おう、早く行ってきな。その子にも、店の宣伝しといてよ。
    うん、またよろしくね。毎度あり!

     去って行く高校生を見送るヒカル

ヒカル ……いや、オイ! 勉強しろよ! ったく、こういうのが学力低下の一端を担
    ってるんだろうねぇ。知らんけどさ。

     道具の手入れ等をしながら、通行人に挨拶を交わす

     客がやって来る
     サラリーマンのようだ

ヒカル いらっしゃい! はいはい、ゆーっくり選んでくださいな。
    本場大阪の魂がこもったロシアンルーレットたこ焼きとかもおすすめだよ。
    何が入ってるかって? そりゃもう、食べてみてのお楽しみだね!
    ……はい、6個入り1つね。ちょっと待ってねー。

     ヒカル、たこ焼きを作り始める

ヒカル え、店の名前? そうそう、私の名前から取ってんの。
    ああ、宇多田ね。流行ってた頃は、ちょくちょくネタにされてたよ。
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