野口雨情物語
野口雨情物語       高平 九 
                       
キャスト 三条紀世(女性)            │ピアノ伴奏者          
     野口雨情(男性)            │                
     石川啄木(男性)             │上演時間 約三十分       
     コロス 11名(内一名は男性)     │                
                       
   │  ?@ 三条紀世上手より登場。深くお辞儀をし、丁寧な口調で話し出す。     
   │                                      
紀 世│皆様、こんにちは。わたくし、雑誌『金の船』編集部の三条紀世と申します。   
   │                                      
紀 世│本日は「野口雨情物語」と題しまして、詩人野口雨情先生についてお話をさせていただ
   │きます。                                  
   │                                      
紀 世│皆様、野口雨情先生のことはご存知でしょうか(会場の反応をみてください)   
   │そうですね。「シャボン玉」や「七つの子」などの童謡の作詞で有名な方です。  
   │お手元のチラシの裏にある曲は、すべて雨情先生の作詞です。どの曲も一度は耳になさ
   │ったり、お歌いになったことがあるものばかりではないでしょうか。       
   │今日は、野口雨情というひとりの詩人の人生をたどりながら、これらの懐かしい歌を皆
   │さんといっしょに歌っていきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。 
   │                                      
紀 世│さて、雨情先生は明治十五年五月二十九日、茨城県の磯原というところに生まれました。
   │福島県との県境に近く、海と山に囲まれた風光明媚なところでございます。    
   │本名は野口英吉。結婚七年目に授かった長男ということで、御両親は英吉をとても大切
   │にお育てになったそうです。野口先生が、大人になっても童(わらべ)のような心を持
   │っていらっしゃったのも、幼い頃に伸び伸びと大らかに過ごしていらっしゃったからか
   │もしれませんね。                              
   │ちなみに、野口家は楠木正成公の弟正季(まさすえ)公の末裔で、江戸時代には水戸の
   │黄門様とも親しいおつきあいがあったような名家でした。また、お父様は廻船問屋を営
   │んでいて、たいへん裕福だったそうです。                   
   │                                      
   │?AコロスA「英吉」→「本名は野口英吉」→本を持って元気に出てくる。     
   │ コロスBC「父」「母」→「お育てになったそうです」→出て来て、英吉少   
   │年の頭を撫でたり、ほおずりをして可愛がる。                 
   │   BC父母→「たいへん裕福だったそうです」→A英吉だけ残して、ハケる。  
   │                                      
紀 世│小学校時代の英吉少年は学校が嫌いで、近くの山に行って本ばかり読んでいました。
   │気の優しい恥ずかしがりの少年で、向かいの家の兼吉くんだけがただ一人の友人でした。
   │高等小学校に進むとさらに学校に行かなくなったようですが、不思議と成績だけはよか
   │ったようです。                               
   │                                      
   │?BA英吉→「小学校時代の……」→センターに座り、本を読みはじめる。     
   │ D「兼吉」→「ただ一人の友人でした」→現れ、A英吉と肩を組み仲良くする  
   │ A英吉→「成績だけはよかった」→いばったポーズ。             
   │ D兼吉→→それを讃える。                         
   │                                      
紀 世│雨情先生の詩の中には、少年時代に海や山と親しんだ経験が元になっている詩がいくつ
   │もありますが、その中でも特に有名なのが「七つの子」でしょう。        
   │では、その「七つの子」をみんなで歌ってみましょう。チラシの裏に歌詞がありますの
   │で、皆さんも一緒に歌ってくださいね。                    
   │?Cピアノの伴奏はじまる。                          
   │ コロス全員→「みんなで歌ってみましょう」→A英吉の回りに「かあかあ」と飛 
   │びながら出てくる。口にはカラスのくちばしを付けている。「七つの子」を観客  
   │といっしょに歌う。                             
   │ コロス全員→→A英吉だけ残し、「かあー」と叫んでハケる。         
   │                                      
   │  からす なぜ鳴くの │ 可愛 可愛と │ 山の古巣へ          
   │  からすは山に   │ からすは鳴くの│ いって見て御覧        
   │  可愛い七つの   │ 可愛 可愛と │ 丸い目をした         
   │  子があるからよ  │ 鳴くんだよ  │ いい子だよ          
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