ベランダー・ドリーム
ベランダー・ドリーム Ver.05
キャスト 妻A │ スタッフ 演 出
妻B │
夫A │ シナリオ 高平 九
夫B │
黒子A
黒子B
子供B(声のみ)
舞台 五月下旬。マンションのベランダ。隣家とベランダ越し。背景はいらない。出入りは袖から。道具は仕切りのパネルと、高さが一メートル程度のてすりだけで、あとは無対象。
下方に暗転用の黒幕が置かれている。最初、舞台は丸見えでよい。
シーツは本物を使用し、洗濯物も運ぶときの容器だけ本物を使う。主婦たちはエプロン姿。スリッパ。
前説 黒子二人が登場。短い枕のあと、少し改まった調子で、
│
黒子A│さて、ここは日本のどこにでもあるマンションの一つです。隣り合った部屋の
│ベランダがこの話の舞台。
│
黒子B│それぞれの部屋には夫婦とその子供が住んでいます。季節は初夏。今日は金曜
│日。いい天気です。芝居なんてやめて昼寝でもしたいね。
│
黒子A│お前なあ……(黒子A腰に手をあて、Bをにらみつける)
│
黒子B│(怖そうに、逃げ腰で)…それでは皆様、最後までごゆるりと御覧ください。
│(B逃げながらチョーンチョンチョンと木を入れ袖に去る。A後を追ってハケ
│る)
│
│ 1 プロローグ
│
│ 五月下旬の金曜日。
│ 上手妻A。シーツ(真ん中に大きなシミ)を持って現れ、
│ てすりに掛ける。シーツにはおねしょの跡。下手袖から妻B洗濯物を干
│ すために出てくる。妻B洗濯物をマイムで干しながら。
│
妻A │こんにちは。
妻B │こんにちは。
妻A │いい天気ですね。
妻B │ほんと。亭主のパンツなんか干してないで、どっか行きたいわ。
妻A │ほんとですねえ。
妻B │(シーツを覗き込みながら)子どもさん?
妻A │ええ。最近治ってたんですけど……。
妻B │おいくつ?
妻A │九歳です。
妻B │小四かあ。うちの子も少し遅かったかな。最後におもらししたの一年生の頃だ
│ったかしら……。
妻A │……そうですか。遅い子でも小学校に上がる頃には治るっていいますよね。
妻B │そうねえ。もっとも、うちの子は中学一年だったけど。
妻A │えっ?
妻B │あれなんじゃない?環境が変わってストレス感じてるのよ。うちの子もちょう
│ど三年前このマンションに越して来た頃だったもの。小学校の友達が誰もいな
│くて、なかなか友達できなくてさ。……学校は行ってる?
妻A │ええ。一応。……転校が原因なんでしょうか。
妻B │大丈夫。すぐに馴れるって。ほら、クラスが変わるだけで五月病になっちゃう
│子もいるって言うじゃない。子どもは繊細なのよ。学校行かなくなる子もいる
│らしいし……。
妻A │……そんな。不登校にでもなったら……。
妻B │……だ、大丈夫だって。あなたが神経質になったら、子どもさんにも影響する
│よ。それにこの前テレビでやってたんだけど。大物ほどいつまでもおねしょの
│癖が抜けなかったって。
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