風船爆弾
銃後の戦争
脚本「風船爆弾」 一幕三場
−銃後の戦争−
2014.12.18(初稿)
【登場人物】
ナレーター
小学生 太郎、二郎、三郎、花子、桜子
女学校生 鈴江、松子
中学生 輝夫、隆
久保伍長
宮沢賢治先生
風野又三郎
黒子 2名
【あらすじ】
戦争末期に作られた風船爆弾の話です。
小学生や中学生、女学校生を動員して、風船爆弾が作られています。
爆弾を積む巨大な風船は、和紙をこんにゃく糊で貼り合わせたものです。
それに水素を詰めて空高く揚げて偏西風にのせ、アメリカまで飛ばして爆発させようというのです。
自らこんにゃくの糊作りを志願した太郎は、休憩時間に風船の作業場に忍び込みます。
太郎は、風船の籠に潜んでアメリカまで飛んでいって、
爆弾を落とそうとひそかにたくらんでいて、そのために風船の実物を探りに来たのです。
ところが警戒していた兵隊さんに見つかってしまいます。
反省のために閉じ込められた作業場に、隙間風とともに現れたのが風の精である風野又三郎です。
彼は、太郎に代わって風船爆弾をアメリカに誘導して、戦果を見届けてやろうと約束します。
さて、そこから物語りはどんなふうに展開してゆくのでしょうか。
続きは見てのお楽しみ。
【では、はじまりはじまり】
ナレーター 「2014年に日本の和紙がユネスコの無形文化遺産に登録されました。知っていますか? 和食も登録されているし、和紙も登録されて喜ばしいことです。でも、和紙には悲しい歴史もあるのです。今から七十年以上も前のことです。太平洋戦争の終わりの頃です。日本は飛行機もない、戦艦もしずめられて少なくなっていました。そこで、考えられたのが風船爆弾です。和紙を張り合わせて大きな紙風船を作って、そこに水素をつめます。水素は軽いですから、浮き上がります。その風船に爆弾をつんで空に飛ばすと、上空の風の流れに乗ってアメリカまで飛んでゆきます。そこで爆発させようというのです。
今日の劇は、その風船爆弾の話です。……おっといけない。(と唇に指をあてて秘密のしぐさをする)
劇をはじめる前に、知っておいてほしいことがあります。じつは風船爆弾は、軍の秘密兵器なのです。
だから、風船爆弾と言わないで、『ふ号兵器』と暗号で呼ばれています。(と、『ふ号兵器』と
書かれたカードを示す)アメリカのスパイに聞かれたら困りますからね。
もっとも、この『ふ号』の『ふ』(と『ふ』を指差す)は、
風船の『ふ』でしょうから見え見えですけどね。
まあ、ということで、今日の劇は『ふ号兵器』の話、となります。
では、はじまりはじまり」
【一場】
(中学校の軒下。
三郎が、大きなおろしがねでバケツの中にこんにゃく芋をすり下ろしている。
太郎と二郎は手持ちぶさたで、うろうろしたり、バケツを覗き込んだり。
傍らにこんにゃく芋を入れた籠が置かれている)
太郎 「おー、さむい。今日は特別に寒いな」
三郎 「こんな風ビュービューの校舎の軒下で、冷えたこんにゃく芋をおろしてるん
やから、寒いのはどうしようもないよ」
太郎 「あの兵隊さんは、そんなことおかまいなしや」
二郎 「そりゃあ、自分たちから風船爆弾手伝わせてください、言うたんやから、
しょうがないですよ」
太郎 「バケツにいっぱいすりおろせ、って命令やからまだまだや」
(と、バケツをのぞきこむ)
二郎 (空を見上げて)「風がきついね。凧揚げにはもってこいの日ぃや」
三郎 「空襲があるかもしれんのに凧揚げする気になるか」
二郎 「こんな田舎にB29も来ないから大丈夫。なあ、太郎」
太郎 「そうそう、この前もやったもんな」
三郎 「たまに空襲の帰りに爆弾を捨てていくB29が来るやろう。凧揚げなんかしてたら、
機銃掃射でダダ、ダダって撃ち殺されるよ」
太郎 「大丈夫、溝の中に跳びこんだら飛行機からは見えない、
兄ちゃんがそう言うとった……」
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