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体感速度

「体感速度」　作　玄崎尭（げんざきぎょう）

◇登場動物
・マレーバク（ショウヘイ君）　………若い♂
・アルダブラゾウガメ（ピンタ君）……老齢の♂

◇舞台
・動物園の屋外飼育エリア

　　　　　　　　　　　　　　　　明かりつく。屋外飼育エリア内。
　　　　　　　　　　　　　　　　驚愕の表情のマレーバクと、落ち着いた表情の
　　　　　　　　　　　　　　　　アルダブラゾウガメが向かい合っている。

マレーバク（以下バク）　　　　　　　………。

アルダブラゾウガメ（以下ゾウガメ）　………。

バク　　　　　　………、えぇぇぇ〜〜っ！？

ゾウガメ　　　　何を、そんなに驚いているんですか。

バク　　　　　　……いや。……えっ？　うそ！？

ゾウガメ　　　　まずは落ち着いて。順を追って話してみてください。

バク　　　　　　いや、順を追っても何も。……え！？　アンタ……、「いたの」！？

ゾウガメ　　　　ええ、いましたとも。

バク　　　　　　「いましたとも」というかさ。えっ！？　今俺さ、正直今、
　　　　　　　　常識がひっくり返ったような衝撃を今受けてんだけどさ。

ゾウガメ　　　　あなた今、「今」って言葉、３回も言いましたよ。
　　　　　　　　あ、「いましたともいうかさ」も含めれば４回か（笑う）。

バク　　　　　　いや今そういうのはいいんだよ！！

ゾウガメ　　　　まあまあそんな大声でわめかなくても。どうか落ち着いて。

バク　　　　　　落ち着けるかぁ！！　……つーかそもそもアンタ誰！？　いつから
　　　　　　　　ここにいんの！？

ゾウガメ　　　　私ですか。それでは自己紹介しましょう。私はアルダブラゾウガメの
　　　　　　　　ピンタ君。今年で８８になりました。「ピンタ君」というのは４０年
　　　　　　　　前、当時の飼育員が私をピンタゾウガメと勘違いしたからで……。

バク　　　　　　名前の由来なんか別にいいんだよ！！　いつからここにいるんだって
　　　　　　　　聞いてんの！！

ゾウガメ　　　　あぁ。えっと、いつから？　私はずっとここにいますよ、ショウヘイ君。

バク　　　　　　……嘘だぁ！　ここはマレーバクのコーナーだよ！！

ゾウガメ　　　　いえ、マレーバクとアルダブラゾウガメのコーナーですよ。

バク　　　　　　何言ってんだアンタ？

ゾウガメ　　　　あなた、マレーバクのコーナーにアルダブラゾウガメがいることが
　　　　　　　　おかしいと？

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