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非常識社員

　　靴屋。男がいる。男は店員。そこに男２が現れる。

男２　あのーすみません。
男　　あ、はい。
男２　先ほどお電話させていただいた山田商事(株)の男２と申しますが。
男　　名乗るのに(株)いらないよ。
男２　今、お時間よろしいでしょうか。
男　　ん〜、申し訳ないんだけど、ほかにお客さんがいるんで、もう少し後にしてくれる
　　　かな。
男２　あ、はい。それで、今回伺ったのは
男　　聞いてる？　ねぇ聞いてる？
男２　え？　あ、聞いてます聞いてます。
男　　私が、言ったこと覚えてる？
男２　はい。
男　　なんて言った？
男２　(株)いらないよ。って。
男　　違う違う。そこはさほど気にしてない。ってかお前が気にしろよ。
男２　え？　すみません。聞いてませんでした。
男　　……まあ、いいや。今、お客さんいるから、後にしてくれるかなって。
男２　(店内を見渡す)おい！　帰れ！　もう閉店だ！　こんな店なんかくるな！
男　　おい！
男２　(しらじらしく)あ、お客さん帰りましたね！
男　　(ツッコむ)やかましいわ！
男２　邪魔者は消えました。先ほどの話の続きをしましょう。
男　　……で、なに？
男２　今度十二月に、この商店街で、お祭りがあるのはご存じで？
男　　あー、あれね。はいはい。
男２　その祭りの企画をわが社が担当させていただくことになりまして、
男　　あ、なるほどね。よろしく頼むよ！
男２　それで、そのお祭りで、ビンゴ大会をすることになりまして、その景品としてこち
　　　らのお店のものを頂けないかと思っていまして……それでですね、
男　　書類とかある？
男２　(ツッコむ)今俺がしゃべってんだろ！
男　　なんで？
男２　なにか景品になるものございませんか？　これが関係書類になります。
男　　んー……でも景品に靴ねぇ……。
男２　確かに微妙ですね。
男　　お前がそれいう！？
男２　なんか他にございませんか。
男　　お前何しに来たんだよ！
男２　こう……薄型テレビみたいな。
男　　ここ靴屋だよ？　テレビあった方が不思議だろ。
男２　アハハハ。
男　　何笑ってんだよ！
男２　じゃあ靴ひもとか。
男　　いらねぇだろ！
男２　そんなことないですよ！　(靴見せながら)僕いま靴ひも切れてますから！
男　　それはダメだろ！　お前営業マンだろ！？
男２　今日は何だか不吉だなって思ってました。
男　　今日切れたの！？　それは仕方ないか……。
男２　いえ、一週間ほど前です。
男　　なおさらダメだろ！　お前よくそんなんで働いていられるな！
男２　ハハハ。僕が社内で何て言われてるか知ってます？
男　　なんなんだよ。
男２　(ドヤ顔で)窓際族です。
男　　じゃあなんできたんだよ！
男２　営業ですよ！
男　　わかってるよ！　なんで窓際族のお前が来て他の社員が来ないんだよ！
男２　それはこの店がそれだけのことだからだと思います。
男　　おい！

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