美容室
「美容室」 作:白井 秋
キャスト
美容師(女・又はオカマでもOK)
アシスタント(若い女・新人アシ・失礼なヤツ)
客1(いわゆる適齢期ぐらいの女)
客2(客1より年上の女)
下手側に美容室のカウンター。アシスタントが立っている。中央にイス2つと、その正面に
鏡の枠のみ。後ろに座ると顔が見える。(舞台が狭くて動きが見えにくい場合は上手側に
寄せて斜めに設置)美容師の使うワゴンがあり、クシ・鋏・カーラーなどが乗っている。
下手から髪の長い女・客1が入ってくる。
アシ いらっしゃいませ。ご予約は。
客1 あ、いえ。(カウンターにバッグなど置く。冬なら上着など)
アシ では、少々お待ち頂くようになりますが。
客1 あ、はい、いいです。
アシ 今日は、どのようになさいますか?
客1 あの、切っちゃって下さい。バッサリ。
アシ せっかくそんなに長いのに?バッサリ?
客1 ええ。
アシ 松浦アヤくらい?それとも黒木ヒトミくらい?いっそ、松山チハル?
客1 黒木ヒトミくらいで。
アシ なりませんよ。顔は。
客1 わかってます。
アシ もしかして、失恋ですか?
客1 ……
アシ いるんですよねー。これ見よがしに髪切る女。でも、たいていなんにも変わんないんですけど
ねぇ。ま、あてつけになる程度ですかー。
客1 帰ります。(怒ってバッグなど持って帰ろうとする)
上手から、美容師と、頭にタオルを巻いてケープを着た客2登場。
美容師 あらー、ケイちゃん、いらっしゃい。どしたの、変な顔して。さ、こっち座って。
イスに客1・2それぞれ座る。客1にはアシスタントがケープを着せる。美容師は客2のタ
オルを取り、クシを入れながら。(その後はカーラーを巻く)
美容師 ケイちゃん、いつも通り、揃えるだけでイイ?
アシ 切るんですって、バッサリ。
美容師 え?
アシ 失恋のあてつけみたいですよ。
美容師 アキちゃんっ。
客1 いいんです。どうせ……
客2 あたしもサ。長かったのよ。お尻まであってさ。これが、トイレとか結構大変なのよねぇ。
美容師 奥さん、想像つかない。
客2 若い頃よぉ、あたしだって若い時あったのよ。ほんのちょっと前だけど。
アシ かなり、昔かも。
客2 アンタだって、歳とるのよ。ババァになるのよ。
客1 ウッ。ううっ。(泣き出す)
美容師 ど、どしたの?
客1 ババァって…
美容師 ケイちゃんに言ったんじゃないわよ。
客1 ババァって、あの人。
アシ ああ、男ですか。
客1 初めて会ったとたんに、“マリちゃん”ってタイプじゃないじゃん、ババァじゃんって。
客2 “マリちゃんってタイプ”って、どんなのよ?
客1 イメージ固まってたらしくて。
アシ 名前でイメージ固められても。
客1 私、マリちゃんってタイプじゃないですか?
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