セオリー探偵
セオリー探偵 改
四郎 主人公
白木 ヒロイン
黒井 犯人
みんな、一所に集まっている。座っていたり、立っていたり様々。
四郎「これで全員だよな」
黒井「はい。本日当館に宿泊される方、従業員含めて全員です」
白木「四郎(しろう)ちゃん、これから一体何が始まるって言うの?」
四郎「ああ。これから、この断崖絶壁陸の孤島と化した鋼骨館(こうこつかん)で起こった連続殺人事件の真犯人を暴く」
黒井「な、何ですって?この中に真犯人がいると言うのですか」
白木「やけに親切な説明口調なのね、もう五人も人が死んでいるのよ」
四郎「安心してください。犯人は、この中にいる」
黒井「それは言いたかったのですね」
白木「じゃあ誰なの?その真犯人って言うのは」
四郎「ああ。真犯人はあんただよ、鋼骨館オーナーの黒井さん!」
黒井「な、何だって?私が犯人という証拠はあるのか、間違っていたらただじゃおかないぞ」
四郎「まあ、最後までお聞きください。皆さん納得すると思いますよ。白木、まず状況を思い起こしてみよう」
白木「え、と、この鋼骨館に通じるたった一つのつり橋を渡って来て」
四郎「確かに、ここに来るまでの間につり橋燃やされて殺人事件起こるだろうなとは思ってたが、そこじゃない」
黒井「思っていたなら事前に何かしらの用意をしておいてくれよ」
四郎「それは無理だ。犯罪防止は探偵の仕事ではない」
白木「じゃあ何を思い起こせばいいのかしら」
四郎「ここで考えてほしいのは今の状況なんだ」
白木「え、今は五人目の殺人が起きて三人になったところだけど…」
四郎「そう。主人公とヒロインは犯人にはならないから、残ったあんたが犯人だ!黒井さん、いや、連続殺人事件の真犯人!」
黒井「…まあ、犯人ではあるけど」
四郎「人を殺しすぎたのが仇になったな。最後に閃くまで、あんたのことは信じていたよ」
黒井「閃くの遅すぎじゃない?」
白木「じゃあ、電話線を切ったのも、つり橋を燃やしたのも、ここに電波が届かないのもあなたの仕業なのね」
黒井「電波はほら、私というよりかはこの地域が悪い。まあ、そんなところに建てた私が悪いといえばそうなのかもしれないけどね」
四郎「何でこんなことをしようと思ったんだよ」
黒井「いや、その、復讐をね」
四郎「復讐なんかしたって、何も変わらないじゃねえかよ!」
黒井「うん。それはもう、自分で気づいちゃってたよ。なぜなら、いつまで経っても一向に真犯人を暴いちゃくれないからね!」
四郎「え」
黒井「ビックリしたよ。君がドアに書いてあったオープンをおペンって読みだした時は。ペンに丁寧語を付け出すとは思っても見なかったからね」
白木「何で逆に怒られてるのでしょうか」
黒井「散々だよ!復讐に意味が無いなんて随分前に悟ってたね。二人目に手をかけた時点でもう改心していたよ」
四郎「え、じゃあ何で五人も」
黒井「お前が毎度見当はずれの推理をするからだろ。あんたのせいで三人目の井岡さんが真犯人に仕立て上げられた時は誰よりも心苦しかった」
四郎「いや、でもあれはダイイングメッセージに井岡さんって」
黒井「ダイイングメッセージなんて無いよ。あれ、単に血がアルファベットのIみたいになっただけだからさ」
白木「いや、でもIって中々ならないから」
黒井「結構なるよ、だってただの棒線だから。そして、私を捕まえる時もそんな曖昧な推理で」
四郎「いや、でも探偵もののセオリーなので」
黒井「探偵だったらこうなる前に何とか推理しろよ。今の状況は完全にゲームオーバーだからね。ちょっと、そこ座りな」
黒井が立っていて、二人は正座。ちょっと不満そう。
黒井「あのね、探偵もので探偵が使えないってのが一番やっちゃいけないタブーだと思うんだ。やるならせめてヒロインが天才でいてよ」
白木「でも、私は勉強できるけどIQは低いタイプというか」
黒井「何でもいいんだけどさ、こっち側もそのセオリー信じて行動するんだから」
四郎「す、すみません」
黒井「本当に頼むよ。こっちもセオリー守って自首はしないように頑張ったんだから」
白木「す、すみません」
黒井「これだけは言っておこう、性格の悪そうなヤツは絶対に殺される。性格の良さそうなヤツは大体犯人だ」
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