くまさんと!
【くまさんと!】
熊 ♪ある日、森の中、熊さんに 出会った 花咲く森の道 熊さんに出会った
A なんですか?
熊 探したぞ。お前だな。
A ?
熊 お前がこの歌を作詞したと聞いてはるばるやってきた。はじめまして、熊です。
A 人間です。で、何の用?サイン?なら、お断りだよ。
熊 オー。なんて高飛車な人間なんだ。こいつは先が思いやられるぜ。
A で、なんのよう? 私、こうみえて忙しいの。
熊 まあまあ、そんなに生き急ぐなって。ホットミルクでも飲んで気持ちを落ち着かせ
ろよ(すでに舞台上に置かれていたホットミルクを差し出す)
A あぁ、なんて優しい味。これなら今夜はぐっすり眠れそうだわ。グッナイ。
熊 それはよかった。が、ちょっと待てよ。俺はお前を眠らせに来たんじゃないんだぜ。
まあ、もっとも、いまはお前をの眠りにつかせたくて仕方ないんだがな。
A まあ、物騒な。ポリスメンを呼ぶわよ(すでに舞台上に置かれていた火縄銃を熊に向
ける)
熊 ははは、冗談さ。ちょっとからかってみたかっただけさ。
A レディをからかうなんて失礼な人ね
熊 ごめんごめん。でも、そんな男に
A 女は魅かれる
熊 だろ。
A もう、意地悪な人
熊 でも そんな男に
A 女はメロメロ
熊 だろ。
A もう、私の気持ちを鷲掴みにしてどうしたいの?
熊 どうもしないさ
A どうもしない?そうやって焦らせるのがあなたの手?
熊 だとしたら?
A もう、めちゃくちゃにして
熊 おやおや。こんな男に捕まっちゃ駄目だぜ。
A でも
熊 熊の言うことは聞くもんだぜ。お嬢さん・・・お逃げなさい。
A ♪スタコラサッササノサー スタコラサッササノサー
熊 ・・・スタコラサ、か。そんな走り方じゃ、10秒を切るのも夢のまた夢だな
A コーチ
熊 俺は当時、日本人として唯一、世界陸上で決勝の舞台に立った。だが、越えられない
壁があるのを痛感した。
A 壁
熊 世界のトップランナーたちは日本人に比べて命の危険にさらされるリスクを負ってい
る。たとえば、アメリカ人。彼らは銃を所持しなきゃいけないくらい日々 命の危険
を感じながら生きている。たとえばアフリカ人。彼らはいつも野生動物に襲われるか
もしれない恐怖を感じながら生きている。しかし、日本人はどうだ。大東亜戦争に敗
れ、ポツダム宣言を受諾。マッカーサーによる洗脳を経て、いまに至る。我々は自分
の中にある危険を察知する能力を忘れているのだ。
A それが走りとどう関係が?
熊 平和ボケの結果、スタコラサという滑稽な走りが生まれたとしたら?
A はっ!
熊 彼らは危険なものから逃げる走りを知っている。それが日本人との決定的な差なん
だ。
A ということは、私は一生、世界で勝つことはできないのでしょうか?
熊 いや、そんなことはない。むしろお前は運がいい。
A え?
熊 それは、この俺がコーチであるということ。ついに正体を明かす時が来たようだな。
A コーチ?
熊 バリ、バリ、バリバリバリバリ(仮面を剥ぐ仕草)
A 熊!?
熊 そうさ。俺は熊なのさ。つまりだ、お前はいま、危険な状況にあるわけだ。さあ、逃
げてみろ。逃げることでお前の能力を引き出すのだ。
A いやー(逃げる)
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