居酒屋同窓会
「居酒屋同窓会」 脚本 椙田佳生

《登場人物》
鈴木(男)…かつてのガキ大将的人物
佐藤(男)…かつての文武両道的人物
伊東(女)…かつての風紀委員的人物
渡辺(男)…かつての虚弱体質的人物
店員(女)…今どきのアルバイト
山本(女)…かつての担任教師的人物

 とある居酒屋。
 個室になっている座敷に鈴木、佐藤、渡辺、伊東が集まっている。
 同窓会を兼ねた飲み会のようである。

鈴木 よし!これで全員そろったな。始めようか!
佐藤 おい、ちょっと待てよ。全員って、これだけか?
伊東 そうよ。いくらなんでも少なくない?まだ席がこんなにあいてるわよ。
渡辺 島崎君と高田さんなら体調不良で欠席だってさ。
伊東 他は?加藤君や山田さんや吉田っちは?
鈴木 風邪をひいただとか腹が痛いだとかでキャンセルだ。
渡辺 すごい偶然だね…。
佐藤 本当かどうか疑わしいけどな。
渡辺 どういう意味?
佐藤 単に面倒だっただけじゃないのか?平日の夜、しかも火曜日だからな。
鈴木 安いし、店も静かだろ?目の付け所が違うんだよな、俺は。
佐藤 まあ、俺は水曜日が休みだからありがたいけれどな。
鈴木 だろ?
伊東 えー。だったらあたしも来なければよかった。明日は朝から会議でプレゼンなのよ。飲んでる場合じゃないわ。
鈴木 かたいこと言うなよ。久しぶりの再会だぜ。みんなで盛り上がろうぜ。
佐藤 みんなって…たった4人だぞ。
渡辺 あ。あとから山本先生が遅れてくるはずだよ。
鈴木 お前、やけに詳しいな〜。あ!まさか、山本先生と付き合ってるんじゃねえのか?
渡辺 な、何言ってるんだよ。年齢が違いすぎるじゃないか。
鈴木 そんなことねえだろ?あの先生、確か25〜6歳ぐらいで、結構若かったじゃねえかよ。ちょうど俺たちとお似合いの年頃だぜ。
佐藤 それはあの頃の話だろ。今は俺たちと平等に歳を取っているはずだ。
伊東 そうよね。歳の差ってのは、いつまでたっても変わらないからね。
鈴木 言われてみりゃあ、そうだな。お前ら、大人になったな、考え方が。
渡辺 そういう問題なのかな。
佐藤 鈴木にとってはそうらしい。
鈴木 でもよ、渡辺。お前、何でそんなにあいつらの予定に詳しいんだ?幹事の俺よりもよ。
渡辺 ラインでつながってるんだよ。
鈴木 ライン?何だそりゃ?
伊東 スマホのアプリよ。って、言うか、本気で知らないの?
佐藤 こいつは昔っから、流行や文明にはうとかったからな。
鈴木 俺は我が道を行くんだよ。そもそも、ケータイなんてガラケーで充分だろ?どーせ、ゲームとかツイッタ―ぐらいしかやらねえんだからよ。
伊東 何だか…あなたに言われると素直に認めたくない気がするんだけど。
渡辺 でも、スマートフォンがないと仕事で不便じゃない?
伊東 それ以前に、あなたは何の仕事してるんだっけ?
鈴木 営業だ。これでも結構成績いいんだぜ。
渡辺 何を売ってるの?
鈴木 健康食品。
佐藤 外回りでか?
鈴木 いいや。電話でセールスするんだよ。こう、言葉巧みに上手いこと言って、主婦や老人を口車に乗せてな。
伊東 なんか、そう聞くと悪徳な感じに聞こえるわよ。一応…健全なのよね、あなたの会社?
鈴木 もちろん健全だぜ。なんたって、健康食品の会社だからな。それに、社長がしきりに、うちは健全だ、絶対健全だから安心しろって言ってるし。
佐藤 …お前、会社にだまされてないか?
伊東 実際、どうなの?
鈴木 何が?
伊東 あなたのところの健康食品って効き目あるの?
鈴木 ああ。俺も飲んでるけど効果抜群だぜ。なんてったて、1日12時間働かされてるけど、全然へっちゃらだからな。
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