ヤンキーとストーカー
「ヤンキーとストーカー」作:清野 和也

■キャスト
・ヤンキー
・ストーカー
・尚之
・増田


 序場 

    舞台上、椅子が三脚並んでいる。上手にヤンキー、中央に尚之、下手にストーカーが座っている。
    ストーカーと、ヤンキーははじめ後ろを向いて座っている。

尚之    大学の講義が終わる夕方時になると学食の窓際の席にひとり腰掛けます。西日を受けて本を開き、気取る文学少年。でも、本を読んでいるわけではありません。視線は文字から外してこっそり外を眺めているのです。何か、面白いことは無いか、と。でも、キャンパスでは毎日変化のないだらだらとした日常ばかりが過ぎていきます。手をつないで歩くカップル。疲れた顔の教授。講義では死んだ目をしていた学生はそれサークルだ、飲み会だ。女子大生の群れは自殺したらしい文学部の学生の怪談話にキャーキャー言ってる。今日もまた変わらない。でも、何かあるかもしれない。その一瞬を見逃し たくないのです。

        SE:大きな音で、突然の雨音

尚之     夕立だ! コンクリートの地面から、ムンムンと雨の匂い。学生達は一斉に駆け足になります。準備のいい人は持っていた傘をさして、友人を招き入れてあいあ い傘。かばんや荷物を頭の上に載せて雨をしのぐ人もいます。中には、雨など気にしないといった様子で雨の中をぐいぐい行くひとも。雨は好きです。何か起こ りそうな予感がします。なんて素晴らしい
    突然、ストーカー振り向いて

尚之&ストーカー 雨!!

    尚之後ろ向きに座る。ストーカー座ったまま(座ったときは心の声を示す)

ストーカー なんて素晴らしい!そう、これこそ天がこの僕に与えてくれた千載一遇の好機に違いない。僕の手元には、紳士的なデザインの傘と一枚のハンカチーフ。彼女は白いブラウスを濡らし、柔肌を透かして駅へと早足で歩いて行る。僕が紳士的に、傘を渡す。僕「お嬢さん」いや、違うな。僕「マドモアゼル!」彼女「はい!」僕「これを」彼女「まぁ、この傘は?」僕「お使いください。風邪をひかれますよ(ハンカチで頬をぬぐいながら)」彼女「まぁ!ありがとう、素敵!」僕「いえいえ!」彼女「あの、もしよかったら一緒に」僕「そんな滅相も無い」彼女「ぜひ」僕「だってそれじゃあ」・・・・・・・・・・・・・・・・・・。あいあい傘! あいあい傘!!!!!!!!! 肩とか、触れ合っちゃう感じ!?こういったイベントの為にたとえ、ス トーカーと呼ばれようとも僕はずっと物陰から彼女を見守ってきていたと言ってもいい。不良に絡まれたらすぐに守りに行けるように!車が突っ込んできたら身 を呈して守れるように! …それらに比べればまぁ、大したイベントにはならないだろうけれども。 あいあい〜〜!! あいあい〜! 頑張れ!僕!!



    ストーカー立ち上がり、まず椅子に隠れるようにして見ている状態に。
    決意を持ってかけ出す(実際の行動)

ストーカー ま、ま、マドモアゼル!(ト上手へ駆け出す)

    ヤンキー立ち上がって、そこにストーカーぶつかる

ヤンキー  ああん!?
ストーカー ・・・
ヤンキー  何だ、お前! どこに目をつけてんだ!!
ストーカー ・・・ッカッカ!!!(恐怖の表情)
ヤンキー  か?
ストーカー …カ、傘!
ヤンキー  何だ、この傘!
ストーカー おおおおおおお使いください!風邪をひかれますよ!(ハンカチで頬をぬぐいながら)
ヤンキー  ああん!?
ストーカー いえいえいえいえ! ね! ほら、なかなか

    ヤンキー椅子に座って

ヤンキー&ストーカー 素敵な傘

    ストーカー、ひとり佇み、ヤンキーがいるような形でペコペコしている。

ヤンキー  だ。なかなかに良いデザインセンスだ。…だけど、この野郎はどうして、突然俺に傘を渡してきたんだ。俺が雨に濡れて可哀想だからとでも!?…やけに顔拭いてくれるし。風邪の心配してくれるし。クソッ…。ナメやがって!!

        ヤンキー立ち上がって、襟首をつかみ

ヤンキー  オイ、テメェ!!!
ストーカー はいぃぃぃぃっ!!!
ヤンキー  オメェ、何者だ。
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