リスタート
リスタート
作・新堀浩司
人物
前田奈央
石原泉
音楽。
照明がつく。
舞台は奈央の自室。机(あるいはテーブル)に突っ伏し、眠っている奈央。
そこに友人の石原泉が登場。眠っている奈央を見て苦笑い。
音楽消える。
泉 「おーい、そんなとこで寝てたら風邪引くよー?」
奈央、目覚める。
奈央 「…イズミちゃん…」
泉 「お邪魔してるよー」
奈央 「うん…」
泉 「もう準備は終わった?」
奈央 「えっ?」
泉 「準備だよ準備。明日入学式でしょ?」
奈央 「ああ、うん…」
泉 「冴えない顔してんねえ」
奈央 「生まれつきこういう顔ですから」
泉 「顔の問題じゃなくてさ。新生活だよ?もっとこうわくわくとかドキドキとかないの?『ああ、どんな素敵なことがあるのかしら』みたいな胸のトキメキを感じないの?」
奈央 「ないよ」
泉 「なんで?」
奈央 「だって、泉ちゃんいないし」
泉 「…まあ、それは…」
奈央 「一緒の高校いこうねって約束したのに」
泉 「約束守れないのは悪かったけどさ、しょうがないじゃん」
奈央 「泉ちゃんいなかったら、私の高校生活は灰色だよ。いや、どどめ色だ。どどめ色の高校生活だよ」
泉 「そんなことないでしょ」
奈央 「泉ちゃん、一緒にいこうよ」
泉 「無茶言わないでよ」
奈央 「じゃあ私が今の高校行くの辞めて泉ちゃんのとこ行く」
泉 「もっと無茶だよ。大丈夫だって。私がいなくてもいい友達いっぱいできるよ」
奈央 「できないよ。もう3年間ぼっち決定だよ。休み時間もお昼ご飯も放課後もずっと一人で過ごす運命なんだよ」
泉 「なんでそこまで思いつめるかなぁ?中学で私以外に友達いたでしょ?」
奈央 「いたよ。いたけど、それは泉ちゃんがいてくれたからだもん。泉ちゃんがきっかけになって仲良くなった人たちばっかだもん。泉ちゃんがいてくれたからスーパー人見知りでスーパーコミュニケーション障害の私でも友達になってもらえたんだもん。泉ちゃんいなきゃ無理だよ」
泉 「奈央」
奈央 「いいよ。もう私こうなったら極めるから」
泉 「極める?何を?」
奈央 「ぼっち道」
泉 「なにそれ?」
奈央 「友達がいない、孤独な人間が歩む道のことよ。一人ぼっちの道。略して、ぼっち道」
泉 「そんな道聞いたことないけど」
奈央 「ぼっち道を極めて、ぼっちの中のぼっち。キング・オブ・ぼっち。ぼっち王になるから。」
泉 「…そんな高校生活で満足なの?」
奈央 「満足なわけないでしょ?寂しいよ!」
泉 「逆ギレしないでよ。寂しいんだったら、頑張ろうよ」
奈央 「頑張る?何を?」
泉 「友達作りだよ。いい機会だからさ、高校デビューすればいいじゃん!」
奈央 「高校デビュー?」
泉 「人見知りで内向的な自分を捨てて、社交的になろうよ!友達百人作ろうよ!」
奈央 「ははっ。ナイスジョーク」
泉 「ジョークじゃないよ、本気だよ」
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