そして走れ
「そして走れ」
女:女
女面接官:女
男面接官:男
とある面接会場
2人の面接官が長机にすわり、一脚の椅子に気の弱そうな女性が座っている
女:えと・・・私・・・あの。
男面接官:は(鼻で笑って)どうぞ、お座りください。
女:ああ・・・はい。すみません。
男面接官:それで、この仕事を希望した理由は?
女:ええとですね。何となく・・・っていうか・・・必然ってゆうか・・・。
男面接官:は(また鼻で笑っう)
女:私ってば、なんか変なこと言いました?
男面接官:いやー、なんか現代っ子だなーって。
女:そうでしょうか?
女面接官:ゆとり教育の賜物ね。
女:はあ。
男面接官:なにかしら、この仕事を希望した理由があるでしょ?
女:ええとですね・・・。
男面接官:ないの?
女:あります!ありますけど・・・
女面接官:はっきりしてちょうだい。
女:ごめんなさい。ええと・・・一番はこれ以外知らないっていうのが理由ですかね?
女面接官:今度は随分はっきり言うのね。
男面接官:そうだよ。心象を悪くすると採用されないかもしれないよ。
女:そうですね・・・ちなみに、他の人たちは何て答えるものなんですか?
男面接官:それを私たちに聞くのかい?
女:やっぱり、まずいですかね?
女面接官:いいんじゃない。教えてあげれば。参考になるだろうし。
男面接官:そうだな・・・例えば「私にとってこの仕事が天職だと思っています」とか、 「まだまだこの仕事に遣り残したことがあり、是非それを実現したい・・・」
とか言うな、大体。
女:じゃあ、それで・・・。
女面接官:ずいぶん軽いのね?
女:そうですかね?
男面接官:じゃあ、みんなと一緒で良いという答えでいいんだね?
沈黙
女:(小声で)・・・でも、面接のテクニックとかおかしいと思うんです。
女面接官:何?聞こえないわ。
女:・・・みんな同じこと言ってるんじゃ、面接にならないんじゃないかと・・・。
男面接官:いいや、それがなるんだよ。
無難なことをきちんと話せるっていうのがこの仕事で一番大事なことなんだ。
女面接官:そうよ。私たちはそういう人材を求めているのよ。
女:それじゃあ、個性があるとかはマイナス要素なんですか?
女面接官:いいえ、そうではないわ。
個性があっても必要に応じて隠せるっていうのも立派な技術であるといえる。
男面接官:その通り。求められている場所で求められている行動を取れる。
それが正しい仕事のありかただ。
女:でも、それって・・・なんか・・・ちがう。
男面接官:それでは違う理由を教えてくれ。
女面接官:そうね、是非聞きたいわ。
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