「セカンド・ブルー」-long.ver.-
〜200年後の君と、200年前のあなたへ〜
『セカンド・ブルー』〜200年後の君と、200年前のあなたへ〜
【登場人物】
【200年後】
橙子 妹。あおいに強い劣等感を抱く。『かぐや姫』への憧れを捨てられない。
あおい 姉。立体映像作家。天才で傲慢。
ハル 橙子の同級生。15歳の選抜で『かぐや姫』となり、月面に派遣される。あおいの役者が兼ねる。
城田 ハルの恋人。
【現代】
牧 先輩研究者、納豆から皮膚を作る研究のホープ。
加藤 後輩研究者、牧の研究室の後輩。軽い性格。
和子 牧の妻。
カコ(過去)家出少女? 牧と加藤の車に便乗する。
【400年後】
カコ(未来)アンドロイド。繭子の後任となる予定
所長 40歳位。鍾乳洞の遺跡『クジラの腹』の所長。話が長め。
繭子 アンドロイド。保護法のため地上に異動させられることになる。ツンデレ。
サトウ 繭子にベタ惚れの青年。愛すべき前向きなバカ。加藤の役者が兼ねる。
人影が、青い背景とさざ波の中佇んでいる。それぞれの顔は見えない。一人、二人と歩み去る。残るのは、二人の女性のシルエット。二人は手を繋ぐことはなく、完全に寄り添う距離ではなく、離れることなく並んでいる。一人が、歩き出す。迷いのない、確固たる足取り。一人はそれを眺め、また海へと視線を戻し、舞台前面に向かって歩き出す。
明転。中央に豪奢な作りの椅子が一つ。通信台である。椅子に腰掛けたシルエットの女性は、橙子。手には箱をもっている。ビデオレターの撮影中。
橙子 ハルへ。これは私があなたに送る、最後の手紙です。この映像が月に届く頃、あたしは北極にいるでしょう。あなたとは、もう、絶交。・・・急にこんなこと言って、ごめんね・・・だけど、私、本当はあなたのことが大嫌いだった!・・・あなたは『かぐや姫』に選ばれた。あなたは、あたしの欲しいものを全て持って、あたしの前から消えてしまった。何よりあなたは、あの人に似ていた。・・・この10年。毎年毎年送っていたビデオレター。もう、終わりにします。これは、あなたへの手紙です。そして、私の大切な人への手紙でもあるのです。
橙子、宙を見上げる。視線の先には、月。
橙子 姉さん。
ボー、ボーとクジラの鳴き声のような、船の汽笛のような音。
橙子、黒い箱を置く。暗転。タイピングの音が始まる。橙子の怒声が響く。
橙子 ほんっと、信じられない!
明転。一脚の椅子に座り、ディスプレに向かって仕事中らしい、あおい。
そばに立つ橙子。
橙子 ねえ、なんでよ。なんで、あたしのジーンズ捨てたりしたの!
あおい、ヘッドフォンを外し、
あおい は?
橙子 何で人の服を捨てたのかって言ってるの!
あおい 何の話?
橙子 だから、あたしの、
あおい 捨てたのは、ボロ雑巾だけよ。
橙子 ぞうきんじゃなくて、ダメージ・ジーンズ!
あおい 要するにボロでしょ。あ、ちょっと黙って。今・・・凄く複雑な演算が・・・あ、あ、あ。ふっ。
あおい、画面に見入る。演算のことを考える彼女は、少し色っぽい。
橙子 ちょっと。
あおい ふふんふんふんふふ〜・・・(適当な鼻歌)。
橙子 あおい。
あおい あああ、草原に風が吹く!
びゅう、っと草木を渡る風の音。
橙子、思わず髪を抑えるが、立体映像である。手を外し、ヘッドフォンを奪う。
橙子 無視しないで!
あおい わっ。ちょっと・・・いいでしょ、雑巾の一つや二つ。
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