黒と白
混ざり合わないボクのココロ
誰もいない、テーブルが置いてある部屋。
マンションの一室である。
テーブルには醤油が一つ。
別空間に黒っぽい男が一人立っている。
黒「今までずっと、俺には押し殺してきた感情があった。友達だから、いい関係なんだと自分に言い聞かせて、心をずっと、真っ黒な液体の底に押し込めていた。だが、それももう限界だ。俺は今日、自分の殻を破る……」
しばらくして、トーフを持った女の人が部屋の中に現れる。
別空間に、白っぽい服を着た男が現れる。
白「やあ、どうしたんだい、こんなところに呼び出して」
黒「お前は……いつみてもまぶしいな。いつでも真白く輝いて、俺とは大違いだ」
白「よくわからないな、何を言ってるんだ?」
黒と白の会話の間に、女の人、トーフを皿にあける。
女の人がトーフに醤油をかけた瞬間、黒、白の両肩を掴む。
白「何するんだ、痛いよ」
黒「お前のその、まぶしいくらいに真白な体を、めちゃくちゃに汚してやる」
白「やめてよ、僕たち友達同士だろう」
女、箸で豆腐を崩していく。
黒、白を押し倒す。
黒「もうそんな仮面の付き合いは終わりだ。俺はずっとお前を壊してやりたかったんだ。お前を壊して、全身を俺の味に染め上げてやりたかったんだ」
白「そんな、やめて、やめ……」
部屋にインターホンが鳴り響く。
女、黒と白、音に反応してコトを中断する。
女「はーい」
女、部屋を出ていく。
黒「誰だ!」
女、友達を連れて部屋に入ってくる。
友達、買い物の帰りなのか、ビニール袋を持っている。
友達「どうせ明日休みでしょ。女子会やろうぜ女子会」
女「別にいいけどさ、あんたのは女子会っていうより、ただの飲み会なのよね」
友達「おっ、トーフで一杯やっておいでか。トーフといえば、やっぱこれでしょう」
友達、ビニールからポン酢を取り出す。
黒「お前は……!」
別空間に、やや薄い黒の男が現れる。
薄黒「フッ……相変わらずだな。力に任せるばかりの愛し方。そんなんじゃ、誰ひとり満足させてやれねえぜ」
女「ああ、ポン酢ねえ」
黒「こんなところに何しに来た。とっとと出てけ!」
薄黒「お前、何か勘違いしていないか?」
黒「何だと?」
友達「やっぱ、トーフといえばポン酢でしょう」
薄黒「こいつを本当に満足させてやれるのは、この俺だけなんだ」
黒「やめろ、お前の汚れきった手で、こいつに触るな!」
女「あたしは、醤油の方が好きなのよね」
友達「いや、絶対にポン酢の方がウマいって。あ、ちょっと待って」
薄黒「この俺の手が、汚れきった手、か……(笑う)」
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