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あたしたちだけの七夕前夜

（声劇・ラジオドラマ向き）

「あたしたちだけの七夕前夜」

安藤さえ
笹野もも

中学校の部活練習音が遠くに聞こえる。
テニス部、バスケ部、剣道部など。
放課後の教室。
ももが歌っている。

もも　♪ささのはさーらさら
　　　のきばにゆれる
　　　おーほしさーまきーらきら
　　　きーんぎーん……

さえ　笹野ー、歌ってないで手伝ってよー。
もも　ねえ、この歌なんて歌だっけ？
さえ　さー、七夕、とかじゃない？
もも　悪い悪い、いやー見事なささだな、と思ってつい。
さえ　竹原先生が持ってきたんだってさ。山持ってんだって。
もも　（ふき出す）マジで？
さえ　何。
もも　だってさ、タケハラが、笹ってさあ、竹持ってこいよって話じゃない？
さえ　そんな名前で全部決めつけちゃだめだよ。
もも　もう、さえってば真面目キャラなんだから。
さえ　そうね。はいこれ。（大判の色紙をももに渡す）
もも　ええ？これって……
さえ　色紙だけど？
もも　短冊にするにはでっかすぎない？
さえ　だから、切るの。このサイズに合わせて切ってね。
もも　えー何枚作るの？
さえ　百枚。
もも　えええー？
さえ　……のうち半分作ったから、五十枚ね。
もも　あー……え、でも五十枚？
さえ　私もやるから。
もも　えー……さえ、百枚もつるしたら重くなんない？
さえ　しょうがないじゃん、決められたんだから。
もも　誰が。
さえ　竹原先生。
もも　タケハラ無茶言いすぎじゃない？いくら担任だからってさ……
さえ　さ、手動かしてー。願い事も後でじゃんじゃん書くよ。
もも　ええ？クラスのみんなのは？
さえ　それが帰った後でさあ。
もも　何だそれ……

　　　もも、ひとつため息。
　　　二人とも作業に取り掛かる。
　　　はさみのショキショキいう音。

もも　ていうかさー別クラのあたしに頼むことー？
さえ　お礼に奢るから、スーパーカップバニラ味。
もも　やっほう。
さえ　それに、どうせ暇でしょ？
もも　は？いや暇だけどさー……さえ。
さえ　ん？
もも　もうちょっと言い方には気をつけた方がいいよ。ただでさえちょっとあれなんだからさあ。
さえ　あれって何？
もも　いやその、……真面目キャラだからさ。感じ悪いとか思われたら、損じゃん？
さえ　しょうがないじゃん、自分変えられないし。

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