孕-HARAMU-
「 孕-HARAMU- 」
場所:日本海側にある、東北の某県、沿岸。猛吹雪の年。
時:十二月二十五日から4日間
登場人物
三田 晴樹(28) 三田家唯一の男子。個人商店のメガネ屋の副店長。
三田 美月(26) 三田家長女。わがままで奔放。東京で研修医をしている。
三田 祥子(24) 三田家次女。素直で親切。美月に振り回されがち。
三田 美晴(21) 三田家末子。ツンデレ。慶太と付き合っている。
野原 雪子(26) 晴樹の彼女。美月の高校の同級生。図書館司書。
安達 慶太(21) 美晴の彼氏
小田嶋 楓(30) 三田家の最も仲の良い従姉妹。東京から帰省中。近所。
三田 義美(52) 三田家の父。仕事でアフリカに出張中。
第一場。十二月二十五日、水曜日。
オープニングが終わると、暗転の中、電話の音が響く。
明転、電話の鳴る中、祥子が台所から顔をのぞかせる。
祥子 はいはい、はいはいはい!
チーンと、背後でオーブントースターが鳴る。
祥子 げっ。・・・兄さん、にいさーん。電話、鳴ってる。
外から戻ってきたらしい、晴樹。雪を払う動作をしながら。
晴樹 は、なんだって?
祥子 電話!・・・あたし、今、手が離せないよ。
晴樹 さい。少しは落ち着けよ。・・・はい、三田です。
祥子 (顔を出し)うるせえ
晴樹 ばあちゃんっ。おう、ちょっと待ってな。みはるー、みはるー
祥子 (声)ミハなら、彼氏くん迎えに行ったよー
晴樹 うそっ。ばあちゃん、ごめん。美晴ちょうど出はっててさ。・・・二十一歳、に、
じゅう、いっ、さい。さいさい!・・・成人式やったべさ・・・うん、うん。伝えとぐか
ら。だいじにして。へば、年明けたら、みんなで行くから・・・ああ、お袋ね、順調順調。
次帰ってくるの、月曜日だよ。そう・・・今日は水曜日だって。自分で言ったべや。んだ・・・
俺の話はいいから。せば、まずね。(電話を切る)
祥子 ばあちゃん、なんて。また膝痛いーって?
晴樹 美晴に『おめでとう』だとさ。あと、メリークリスマス、だって。
祥子 めずらしい。日付わかってんじゃん。
晴樹 曜日は怪しかったけどなあ。美晴の年も、『十八だべか、十九だべか?』って言う
から、二十一だよって言ったら、ぶったまげてた。
祥子 ・・・して、あにちゃは結婚したんだべ?
晴樹 ・・・チキン、焼けたんじゃないの?
祥子 ふふん。雪子さんは?
晴樹 午前中は仕事らしいから、もうすぐ着くだろ。ああ、腹減ったあ!
祥子、はける
晴樹 あー、そろそろ雪下ろししないと、屋根がやばい。
祥子 (声)誰が?
晴樹 ・・・人頼むかあ
祥子 (声)やってよ。朝一番ゆっくりなんだからさあ。
晴樹 いや、最近、腰が痛くて・・・
と、ぴんぽーん、とインターホンの音。雪子が入ってくる。
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