おかしな誘拐
おかしな誘拐

人物 

悠 人質の少女。9歳
留雄 誘拐犯 男
恵  誘拐犯 女
松田 誘拐犯 男



       舞台はとある屋内の一室。舞台中央には椅子が1つおいてある。そのいすに座って本を読む少女。その傍らには男が一人。
       携帯電話をかけている最中。苛立たしげな様子。

留雄  「…駄目だ」
悠   「…」(本を読んでいる)
留雄  「…おい」
悠   「…」(本を読んでいる)
留雄  「おい」

      悠、本から目を離し留雄を見る。が、すぐにまた本に目を落とす。

留雄  「おい!きいてんのか?」
      悠、再び留雄を見る。
悠   「ねえ…距離感って分かる?」
留雄  「は?きょ、距離感?」
悠   「あなたと私の距離。近いよね?」
留雄  「…うん」
悠   「だったら、そんな大きな声出さなくても、聞こえるから」
留雄  「あ…そうだね…」

      悠、再び本を読む。

留雄  「なあ、ちょっと」
悠、本から目を離し留雄を見る。が、すぐにまた本に目を落とす。
留雄  「返事しろや!」
悠   「イヤ」
留雄  「なんで?」
悠   「そんな義務はない」
留雄  「かっわいくねえガキだなあ」

       留雄、諦めたように椅子に座る。

留雄  「なあ…何読んでんだ?」
悠   「ゲーテ」
留雄  「あん?」
悠   「ゲーテ。知らないの?」
留雄  「し、知ってるよゲーテくらい。よく読むもん」
悠   「へえ」
留雄  「ゲーテ、ゲーテね。あいつさ、最近頑張ってるよな?」
悠   「…」(呆れたような目で見る)
留雄  「…なんだよ、その目は」
悠   「知らないなら知らないって、素直に言えば?」
留雄  「…おうガキ。あんまいい気になんなよ?」

       留雄、懐から拳銃を取り出す。

悠   「…」
留雄  「ちょっと優しくしたらつけあがりやがって。いいか。おめえは人質なんだ。俺がその気になりゃ、てめえの命はあっという間におしまいだ。命が惜しかったら…」
悠   「別にいいよ」
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