夏と戯曲と幽霊部員
夏と戯曲と幽霊部員
作・新堀浩司
人物
井川ユウキ
海老原セイコ
堀内ヒトミ
第一場
舞台はとある高校の特別教室。放課後は演劇部のための練習場所になっている。井川ユウキが居る。
服装は制服。椅子に座って窓の外をぼんやり眺めている。放課後を示すSEなどあると良い。そこに、海老原セイコが入ってくる。セイコはすでにジャージに着替えている
ユウキ 「よっ」
セイコ 「…来てたんだ」
ユウキ 「元気だった?」
セイコ 「まあ、ぼちぼち。久しぶりじゃん。随分」
ユウキ 「ん、そうかな?」
セイコ 「こないだ来たのは三月でしょ。今は七月。」
ユウキ 「そっか。そう言われてみると久しぶりか」
セイコ 「もう来ないのかと思った」
ユウキ 「あれ、寂しかった?」
セイコ 「別に」
セイコ、練習のための準備を始める。(椅子や机を動かしスペースを作る)
準備が終わるとストレッチを始める。
ユウキ 「そっかー、寂しかったか。ごめんねー、あたしもちょくちょくこようとは思って
るんだけど、これでも結構忙しくてさ。あ、ところでさ。どう?部活の調子は?」
セイコ 「どうって、何も変わりないよ」
ユウキ 「新入部員、入った?」
セイコ 「何も変わりない、って言ったでしょ?」
ユウキ 「てことは…ゼロ?」
セイコ 「ゼロ」
ユウキ 「今年も?」
セイコ 「今年も」
ユウキ 「えー、マジで?おもしろい新入部員とか入ってるかなって期待してたのに」
セイコ 「残念だったね」
ユウキ 「セイコさあ、ちゃんと勧誘活動とかやったの?」
セイコ 「やったよ」
ユウキ 「どうせあれでしょ?地味なポスター貼ったりとかしかしてないんでしょ?」
セイコ 「…まあそうだけど」
ユウキ 「ダメダメ。ただでさえ地味なんだから勧誘活動はもっと派手にやらないとさ。ただでさえ演劇部は『なにやってんのかわかんない部』って言われてんだから」
セイコ 「演劇部なんだから演劇やってるに決まってるじゃない」
ユウキ 「まあそうなんだけどさ。ほら。うちみたいな田舎だと『演劇』自体がなじみが薄いからよくわかんないって思われちゃうんじゃん?」
セイコ 「そんなもんかな」
ユウキ 「とにかく、地味な文化部は地味な勧誘やっても駄目ってこと。」
セイコ 「随分偉そうだね。3ヶ月以上もこなかった癖に」
ユウキ 「だからそれは悪かったってば」
セイコ 「大体、今更頑張ってもおそいよ」
ユウキ 「なんで?」
セイコ 「だって今七月だよ。部活やりたい人はもうどっか入ってるだろうし、やる気のない人は勧誘したって意味ないでしょ?」
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