占われたまんま、東
2 占われたまんま、東

舞台を上から見て、真ん中にダイヤの形に一つBOXを置く。その左下と右下に同じよ
うにBOXを置く。
 占い師はお客さんの方を見ている。東くんは上側から出てきてすぐに止まる。

占い師「コウジくんというお友達に誘われて占いにきたのはいいものの、肝心のコウジくんが来ない。どうしようもないので、とりあえずは待ってみることに」
東  「…どうして知ってるんですか、僕の状況」
占い師「そりゃあもう、占い師ですから」
東  「とか言いながらあんたの看板、字汚すぎて『トロい』になってますから。占の漢字が分離しちゃってトロいになっちゃってますから。コウジくん来なくても僕もう帰ろうかなって思ってますよ」
占い師「フッ。そいつは無理だよ」
東  「何でですか」
占い師「あなたは優しい」
東  「な、何を知っているんだ」
占い師「あなたはこの場所を立ち去れないはずだ、その優しさ故に」
東  「そ、そんなことはない」
占い師「こんなダンボールで作ったような看板しか出せない私に慈悲の心を」
東  「そっちかよ!この優しさをお前に使ってやるかよ」
占い師「まあまあ、とりあえずはコウジに電話してみろって、東野」
東  「あずまです」
占い師「いや、コウジだからさ…」

 東くん電話し始める。コウジくん出てくる(除霊師の格好)。
 霊をパワーで縛り付けているところなので、霊も一緒に付いてくる。

 コウジ「もしもし」
 東  「あずまです」
 コウジ「おう、どうした?」
 東  「いや、どうしたじゃないよ。今日は一緒に占いに行く約束だったろう。もう忘れたのか?すっぽかしているのはお前なんだぞ」
 コウジ「ああ、今日だったか。悪い、どうしても外せない急用が入っちゃってさ、今必死になって縛ってるから」
 東  「え、何を?」
 コウジ「あ、いや、何でもないんだ。自家製ボンレスハムとかそんな感じだ」
 東  「おいおい、それは急用じゃないだろう。それとさ、この占い師がなんかさ」
 占い師「ちょっと、後ろの人に失礼でしょう。するかしないか決めてくださいよ」
 コウジ「…」
 東  「ああ、すみませ、ん?後ろの人なんて誰もいないじゃないか」
 コウジ「今まで黙っていたんだけど、俺、除霊師なんだ」
 占い師「背後霊ですよ」
 東  「ええ?」
 コウジ「そして今除霊していて、それがお前に憑いている幽霊なんだ」
 占い師「まあ、背後霊っていうか、背後霊に誰がなるかって、決めてるんですけどね」
 東  「ええ!このタイミングでっ!」
 コウジ「た、確かにこのタイミングでする話じゃないかもしれないが…。びっくりするのも分かるが聞いてくれ」
 占い師「だからさ、早く決めてよ」
 東  「どっち見てんの、怖いよ」
 コウジ「除霊の際は、憑かれている人に聞かなければならないんだ、除霊を行ってもよいかどうかを」
 東  「ちょっと、背後霊の話は後でちゃんと聞かせてな。電話戻らないと」
 コウジ「早くしないとお前は死ぬぞ」

 東くん、電話に戻る。

 東  「ごめんごめん、話の途中だったよな」
 コウジ「いや、そんなこともないけど」
 東  「(占い師見ながら)怪しいな」
 コウジ「なっ、そんなことはない。全てお前のためにやってるんだ」
 東  「いや、あれはまがいものだ」
 コウジ「いやいや、本当なんだって。今必死に縛ってるんだから」
 東  「いいよ、縛らないで(だってそれ、ハムだろ)」
 コウジ「いいの?お前のためにやってるんだぞ」
 東  「え、俺のため…。ごめん、なら縛っていて」
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