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待合室

「待　合　室」　　　作：白井　秋

　　　キャスト
　　　　　　　　　　　　　　離婚したい女
　　　　　　　　　　　　　　カップルの男
　　　　　　　　　　　　　　カップルの女
　　　　　　　　　　　　　　少年
　　　　　　　　　　　　　　老女
　　　　　　　　　　　　　　オカマのひばりちゃん（ホステスでも可）
　　　　　　　　　　　　　　占い師

　　　　　部屋の中に２つの長いす。舞台中央のいすには、カップルと老女。
　　　　　下手のいすには、女と少年が離れて座っている。全員退屈そうにしている。
　　　　　下手からオカマのひばりちゃん登場。

ひばりちゃん　　こーんにちはぁ、ひばりちゃんでぇすっと。あーら、皆さん退屈そうで。
少年　　　　　　そりゃ、退屈ですよ。もう、１時間も待ってるンですから。
ひばりちゃん　　みんなが１時間？黙って、ただ待ってるの？
老女　　　　　　（編物の手を止めて）そういえば、そうねぇ。
ひばりちゃん　　やーだ、気の長い方ばっかりなのね。（カップルの男を指差して）アナタなんて、かなり
　　　　　　　　気が短そうなのに。アタシは、結構タイプだけど。ウフン。（ウィンク）
カップルの男　　俺達は、さっき来たばかりだし。
カップルの女　　私達のー、順番になる頃にはー、日が暮れちゃうわよねー。
離婚したい女　　ここは、いつも待ち時間が長いの。でも予約はきかないし、こうして待つしかないのよ。
ひばりちゃん　　アナタ、常連さんよね。見たことあるワ。
離婚したい女　　ええ、ここの先生にいつも決めてもらってるの。今までの３回の結婚と、２回の離婚も
　　　　　　　　そうだったわ。今日は３度目の離婚をした方がいいかどうか見てもらいに。
少年　　　　　　離婚するんだったら、その結婚は間違っていたんじゃないんでしょうか？
離婚したい女　　フン、子供ね。離婚は、儲かるのよ。
老女　　　　　　離婚をご商売になさってるってことかしら？
ひばりちゃん　　きゃー、すてきっ。私の夢は愛人になることなの。
カップルの男　　ユ、ユメって…愛人が第一志望？
ひばりちゃん　　そ。ハンサムな金持ちがいたら紹介してねん。
カップルの女　　私達―、相性を占ってもらいに来たんだけどー、ここの先生って、カナリ当たるって噂
　　　　　　　　ホントなのー？
少年　　　　　　占いは、統計学ですから、当たる確率が高いと言ってもすべての人に当てはまるわけで
　　　　　　　　はありません。
ひばりちゃん　　それが、当たるのヨ、このセンセ。
離婚したい女　　私は今まで、外れたことは一度もないわね。
老女　　　　　　という事は離婚で儲かってらっしゃるのね。
ひばりちゃん　　ふーん。（少年に）キミは、若いのに、ナニを占ってもらおうっていうのかしら？
少年　　　　　　………母が今、どこにいるのか。
カップルの女　　うそぉ、やーだ、なんか重いー。
少年　　　　　　嘘です。
カップルの男　　お、お前、バカにしてるのか？
少年　　　　　　こんなところで、本当のことを答える義務はありませんから。
離婚したい女　　ま、そうね、この子の言ってることの方が正しい。
ひばりちゃん　　アタシは、隠すこともないから、話しちゃうけど、お店ではひばりちゃんって名前なの
　　　　　　　　ね。でも、なかなかナンバーワンになれなくて。だからイイ名前をつけてもらおうって。
少年　　　　　　ナンバーワンになるって、そんなに大事なことですか？
老女　　　　　　ある種の人たちには、とても重要なことに思えるのね。
カップルの男　　だって、みんな、いい暮らししたいだろ？だから、上を目指す。サラリーマンじゃ、
　　　　　　　　上と言ったって、社長になりたいってワケじゃないけど。
カップルの女　　でもー、ただ順調に進んでいくのもつまんないってカンジじゃない？私はさー、波乱万
　　　　　　　　丈っていいなぁ。なんかー、ドラマみたいでー。
ひばりちゃん　　あらー、アタシなんてもう充分、波乱万丈よォ。
離婚したい女　　波乱万丈なんて、楽しいもんじゃないでしょ。
ひばりちゃん　　いいのよ。人生なんて考え方次第なんだから、楽しんだもん勝ちってことヨ。
少年　　　　　　それに振り回される周りの人間は、たまったもんじゃありませんね。
離婚したい女　　振り回される側にいるからダメなの。振り回す側に回りなさい。そのうちね。

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