ミンナ_シッテル
「ミンナ_シッテル」 脚本 椙田佳生
《登場人物》
イデザワ(男・サラリーマン風の知的で冷静な青年)
ミキタニ(女・内気でネットに引きこもりがちな女の子)
ティム(女・歌手を夢見る明るい女の子)
ラリー(男・ネット、端末マニアの若者)
ナカジマ(女・賑やかなおばさん)
スティーブ(男・寡黙な青年)
イノウエ(男・頼りなさそうな中年)
ティモシー(女・巷で人気の占い師)
オスカー(男・オスカー社の社員が演じるキャラクター)
カサハラ(女・オスカー社の若く気丈な社員)
管制官(声のみ・ヴァーチャルライドアトラクションに登場)
司令長官(声のみ・ヴァーチャルライドアトラクションに登場)
アナウンス(声のみ・ヴァーチャルライドアトラクションに登場)
薄暗い舞台。
舞台中央には規則正しく並べられた椅子。
期待に胸を膨らませながら、その空間に入ってくる人々。
彼らが席に着くと照明が暗くなり、アナウンスが流れる。
遊園地にあるようなヴァーチャルライドアトラクションの様相。
アナウンス 本日はオスカー社が提供する迫力の3D映像バーチャルライド・アトラクション、「キャプテン・オスカーのウィルスハンター2ndG」にご来場くださり、誠にありがとうございます。これより皆さんが搭乗している、電子空間パトロールシップ「VH‐トリニティ」を、オスカー社の最新技術、電子変換プログラムによって電子暗号化し、コンピュータの世界の内側へとご案内します。まずは座席のシートベルトをしっかりと音がするまでセットしてください。お荷物をお持ちの方は、座席下の荷物かごへ収納してください。準備が整いましたら「VH‐トリニティ」乗務員から説明がありますので、そのままでお待ちください。
オスカー やあ、君たち。本日君たちを電脳世界の旅へと導く「VH‐トリニティ」のパイロット、キャプテン・オスカーだ。君たちの旅の安全は、この私が保証しよう。よろしく。さあ、私の片腕となるオペレーターを紹介しよう。
オペレーターのカサハラが音声だけであいさつする。
(以降の管制官、司令長官も声だけの出演)
カサハラ 新人オペレーターのミクシリアン・カサハラです。あなたと組めて光栄です、キャプテン・オスカー。
オスカー ナイストゥーミーチュー、カサハラ君。さあ、さっそく、安全で快適な電脳世界の旅へとテイクオフしようではないか。
カサハラ こちら「VH‐トリニティ」発進許可願います。
管制官 こちら管制塔。情報管理システムクリア。デジタルダイブエンジン機能正常。ウィルス監視プログラム、アップデート完了。システム・オールグリーン。素敵な旅を。
オスカー 了解だ。さあ、出発するぞ。デジタルダイブ、テイクオフ!
まぶしい光と衝撃が客席を包み、電子暗号化されるVH‐トリニティ。
観客の目の前には、コンピュータの中の電脳世界が広がる。
管制官 管制塔よりVH‐トリニティ。デジタルダイブ進捗100%。すべて問題ないわ。
オスカー よし。これで我々は電子暗号化され、未知なるデジタルダイブの世界へと足を踏み入れた。ここから先はオペレーターの腕の見せ所だぞ、カサハラ君。
カサハラ 了解です、キャプテン・オスカー。まずはCPU中枢部を目指し、プロセッサのゲートから潜航します。3時方向へ転進願います。
オスカー 3時方向だな。了解!
方向転換したことで激しく揺れる船内。
オスカー ここから先はすでにパトロール隊がウィルス駆除を行っているので安全なルートだ。安心してくれたまえ。
管制官 管制塔よりVH‐トリニティ。進路前方はウィルスクリアが済んでいないエリアです。ただちに引き返してください。
オスカー なんだと?そんなバカなことが…。
カサハラ も、申し訳ありません。安全なルートは9時方向の間違いでした!
オスカー おいおい。ここまで来たら引き返せないぞ。しっかりしてくれ、カサハラ君。
司令長官 緊急任務だ、キャプテン・オスカー。君たちの進路前方に未知のウィルス活動が確認された。上層部はこれを新種のワームウィルス「G」と名付けた。これよりウィルスのサンプル回収と、デジタル・サーモ・ランチャーによる駆除を実行してもらう。
カサハラ 危険です。乗客がいるんですよ。
司令長官 乗客の身の安全を守りつつ、任務を遂行するのだ、キャプテン・オスカー!
管制官 ワームウィルス「G」接触まであと20秒。
オスカー 仕方ないな。緊急任務実行だ、カサハラ君。あー、乗客諸君、このVH‐トリニティは、並大抵のウィルス攻撃にはびくともしない。安心してくれたまえ。
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