朗読劇「大つごもり」
(原作:樋口一葉)
朗読劇「大つごもり」(原作 樋口一葉)
脚本 小川英之


【登場人物】    (男2人・女4人)

お峯        山村屋に年季奉公に入った女中      【配役・女1】
奥様        山村屋の奥様(後妻)          【配役・女2】
若旦那(石之助)  山村屋の若旦那(先妻の子)       【配役・男1】
大旦那       山村屋の主人              【配役・男2】
伯父        お峯の母親の兄             【配役・男2】
伯母        お峯の母親の義姉            【配役・女4】
三之助       伯父伯母の息子、お峯とは兄弟として育つ 【配役・男1】
丁稚        山村屋の丁稚              【配役・女4】
お留        奉公先を斡旋している婆さん       【配役・女4】
辰次        若旦那の友人の破落戸(ゴロツキ)    【配役・女4】

コロス       ナレーション              【配役・女3】





【コロス(Choros)】
コロスは観客に対して、観賞の助けとなる劇の背景や要約を伝え、劇のテーマについて注釈する。また、劇によっては一般大衆の代わりをすることもある。






※「お店」…通常『おたな』と読ませるように書いています。ただ単に「店」と書いている場合には『みせ』と読みます。






0場

       幕開くと、コロス、板付きでいる。

コロス  時は今から百年余り前、明治の中ごろのお話であります。まだ江戸が東京と呼び方が変わって間もない頃、ここ芝白金台に貸長屋を百軒ほど営むそれは大きな御大
     尽がありました。今で言う、いくつもの賃貸物件を持つ大家さんとでも申しましょうか。その名を山村屋と申します。現在では高級住宅街として知られております
     芝白金台。幕末には討幕の火の手の矢面になるところ、西郷隆盛と勝海舟の談判で事なきを得たのは、皆様よくご存知のこと。お蔭をもちまして、山村屋も今に至
     って隆盛を誇っております。その山村屋に、お峯という年季奉公の女中が居ります。この物語は、その山村屋とお峯の周辺で起こった出来事を綴ったもので御座い
     ます。


1場

       登場人物が出てきて、所定の位置へ。
       音・風の吹きぬける音、葉を大きく揺らす音

コロス  ここは芝白金台、山村屋の奥向き。
お峯   あー、寒い。
コロス  と、かじかむ手に息を吹きかける、お峯。山村屋の奥向きは敷地の北側、井戸はその端にあります。季節は三月の初めの頃。まだまだ吹き抜ける風の寒いこと寒い
     こと。
お峯   その朝、七つになる下のお嬢様の踊りの発表会とかで、こんな朝早くからお風呂の用意を仰せつかって…。
コロス  霜凍る冬の朝、目覚まし時計の鳴る前から奥様の甲高い声に起こされて!
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