五分まってやる
「五分まってやる」
登場人物
雄三(45歳)
律子(42歳)
北川(27歳)
教頭(47歳)
萌 (17歳)
アボスキー(占い師A)
ドボスキー(占い師B)
プロローグ
舞台中央に扉。舞台上は家の中の廊下。扉は閉まっている。
舞台暗転。街の雑踏の音がFI。ややあって、明るくなると「イチニ、イチニ」の掛け声を掛けながら、
アボ、ドボの2人が屋台を抱えて(中に入ったまま)下手から入ってくる。2人は巫女さんの格好をしている。
屋台の正面には乱暴な字で『人生勝たなきゃ!負けたら負けよ!』などと書かれている。
アボ 「ストーップ、ストーップ!」
ドボ 「ああ、疲れた。」
アボ 「この辺にしとうこうか。ね。」
ドボ 「エーっ。この辺って、こんな人通りの少ないところ?」
アボ 「しょうがないでしょ。人通りの多い所だと、さっきみたいに邪魔にされたり、通報されたりするんだからさ。」
ドボ 「それににしたって、こんな寂しいところ・・激サビよ。」
アボ 「いいの!この方がメボシイ人、見つけ易いじゃない。物事、プラス思考で
いかなきゃ。」
ドボ 「ホントかしら。」
アボ 「いいから!それらしい人、見つけたら、アンタの役割、判ってるわね?」
ドボ 「判ってるわよ。まかしといて。」
と、暫くの間、自分達の目の前を通っているであろう人たちに向かって(客席に向かって)
『要りませんか?お札。』『幸せになれますよ、ホントデスよ。』みたいなアドリブをカマス。
ややあって、
アボ 「!(カモを見つけた!)ちょ、ちょっと!そう、そこの君!君です!・・・
そう、あなたよ、あなた。何か悩み事、あるんでしょ?・・・
いいの!言わなくても判っちゃウンんだから。(アボ威厳を正して)アナタは今、思い悩んでいる・・・
心の奥底に渦巻く何か黒い、こう、もやもやしたものが、まるでホンモノであるかのように、
手に取れるかのように・・・そしてアナタは心の奥底で救いを求めているのです・・・」
ドボ 「求めているのです・・・」
アボ 「さあ、こちらに・・・さあ、こちらにお寄りなさい・・・」
ドボ 「お寄りなさい・・・」
相手、寄って来た様だ。
ドボ 「私達はこの世の救われない、衆生を救うために、カミよりツカワサレタ巫女(ミコ)なのです。」
アボ 「そうですよ。自分の力ではどうにもならない、あなたの悩みが、ウソのように消えてしまう・・・」
ドボ、ワザとらしく。テレビの斡旋販売の合いの手のように、
ドボ 「ええ!ホントですか?」
アボ 「本当です。」
ドボ 「でも、どうやって?自分ではどうしようもできないから、こんなに悩んでるのに。」
アボ 「そういう方のためにはこれです!(と、『勝ち組祈願』と書かれたお札を屋台の中からアリガタソウニとりだして、
一礼してから見せる。) このタイッヘンありがたいお札をあなたのお部屋に貼っておきさえすれば、
これはビックリ。人生の悩みが一挙解決アカ頭巾!受験勉強スーラスラ。可愛いアノ子にモテまくり!
就職難もナンノその!人生勝ちっぱなし!という、大変、大変ありがたーいお札なのです。はい。」
ドボ 「ええ?本当ですか?」
アボ 「本当です。信ずるのです。信じるものは救われる、のですよ。はい。」
ドボ 「でも、皆がこれを持ったら・・・」
アボ 「ズボラーシャ!」
ドボ 「ヒー!」
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