エレベーション・エレベーター
明転
SE 蝉の鳴き声
男、袋を持って上手から登場。エレベーターのボタンを押す
SE エレベーターが到着し、ドアの開く音
男、乗り込む
SE ドアの閉まる音
女、下手から登場
男 ……あ、どうぞ
女 すみません
男 何階ですか?
女 30階です
男、ボタンを押す
女 すみません
男 いえ
SE エレベーターの上がる音。突然、大きい音
男 ……あれ? どうしたのかな?
女 止まっちゃったみたいですね
男 困ったな。早くしないとアイスが溶けちゃうのに
男、色々とボタンを押してみる
男 もしもし、もしもーし。すみませーん!
女 繋がりませんか?
男 えぇ、でも携帯があるので。って、ついそこまでだから持ってきてないんだ
女 どうしましょう。早く最上階に行かないと気持ちが変わっちゃう……
男 気持ちが変わる? 何か大事な用があるんですか?
女 え、えぇ。ちょっと……
男 そうだ。あなたの携帯で助けを呼びましょう
女 すみません。今は持ってないんです。持ってても、しょうがないですし
男 どういう意味ですか?
女 あぁ、いえ、こちらの話です
しばらくの間
男 30階の方なんですか?
女 え?
男 あぁ、すみません。最上階の住民の顔は、全員知っているつもりだったんで
女 友達に会いに来たんです
女、小刻みに震えている
男 あの、……大丈夫ですか?
女 …………
男 あの
女 あ、はい……え?
男 震えてますけど、大丈夫ですか?
女 大丈夫。……だと思います
男 閉所恐怖症とか?
女 いえ、そういうわけじゃないんですが。気持ちが……
男 気持ち……
女 とにかく、少し休めば大丈夫だと思います
女、座り込む
しばらくの間
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