ゴーストノート
○登場人物
綾音   人生に失望した事で自殺をしようとする大学三回生。
    澪に取り憑かれる事により、『高い所から落ちても死なない身体』に。

美緒   綾音の担当として派遣された背後霊。仕事は綾音を長生きさせること。
    綾音の自殺を何とかして阻止しようとする。お節介な元料理人。

○本文 (Nはナレーションです。録音でも読み上げでも。)


★一幕

綾音N   『十月二十三日。自殺することにした。』

SE:   ドサッ(落下音)

綾音、横になって倒れている。近くに白装束の女の人が。

綾音   「あれ…?全然痛くない。案外死ぬのって楽なんだな。
 え、もしかして幽霊!?でも…足あるよな…。頭に三角のやつ付いてるけど…」
美緒   「こんにちは。」
綾音   「あ、こんにちは。」
美緒   「(綾音のカバンを差し出して)これ、どうぞ。」
綾音   「あ…ありがとうございます。」
美緒   「わたくし、背後霊派遣サービス閻魔エージェンシーから参りました。美緒と申します。たった今から、貴方の担当となりました!これから長い付き合いになるかと思いますが、よろしくお願いしますね。」
綾音   「はい?」
美緒   「ですから、今日から私が貴方の背後霊です☆」
綾音   「え、背後霊?でも私って死んだんじゃ…。」
美緒   「生きてますよ。」
綾音   「え?」
美緒   「だから、生きてますって。心臓動いてるでしょ?」
綾音   「(心臓に手を当てて)本当だ、むしろいつもよりも脈、速いぐらいだ。
え、でもなんで私無傷なの?私…飛び降りたはずじゃ…。」
美緒   「それは当社のサービスによるものですよ。只今はキャンペーン期間中によりもれなく、『どんな高い所から飛び降りても死なない身体』をプレゼントしております。タイミングばっちりですね!」
綾音   「つまり、貴方のせいで死ねなかったの?」
美緒   「そういう事ですね。」
綾音   「やだ、余計な事しないでよ!」
美緒   「…余計な事って。余計な事なんかじゃないです!大事な命ですよ?粗末に扱ってはいけません。それに、当社の業務内容は『クライアントを極力長生きさせる』事ですからね。これも仕事のうちです。」
綾音   「長生きって…。嫌よ……私には生きてる価値なんてないんだから。死んでやる。何が何でも死んでやる!」

照明落とす

SE   :タタタタ(階段を駆け上がる音)
SE   :ドサッ(落下音)

照明つく
綾音、横になって倒れているが、美緒につつかれて気がつく。

美緒   「(ツンツン)ハロー」
綾音   (うなだれる)
美緒   「ね?無駄でしょ?今なら東京タワーから落ちても、スカイツリーから落ちても、あの岐阜駅にある黄金の信長像の上から落ちたって掠り傷一つ負いませんよ。」
綾音   「ちょっと待って。さすがに黄金の信長像の上からはない。恥ずかしすぎる。」
美緒   「恥ずかしすぎる……って。今の状況で全く動揺していない貴方がですか?」
綾音   「え?」

SE   :ザワザワ(群衆)

綾音   「何?この人だかり」
美緒   「何って…女の人が空から降ってきたら、誰だって驚くにきまってるじゃないですか。それも、二回。しかも無傷ですよ?そんなスーパーウーマンが路上でブツブツ独りで話し出したら、誰だってドン引きするに決まってるじゃないですか。」
綾音   「え、独りで話し出したらって、私貴方と話して……(ちょっと考えて)もしかして貴方って、他の人に見えてないの?
1/7

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。

ホーム