次世代型パン屋構想
★登場人物
店長（♂）： パン屋の店長。婿養子。基本他力本願で適当な性格。
お母さん（♀）：あけみ。店長の奥さん。愛想をつかせて店から出ていく。頭の切れる人。
娘（♀）： たまみ。店長の娘。お母さんっ子。暴走して回りが見えなくなるタイプ。なんだかんだで店長と似てる。女子高生ぐらいの年齢。
バイト（♂）： もやっしー。パンのためならなんでもできます。大学生ぐらいの年齢。
占い師（不問）：占い師のおばあさん（おじいさんでも可）。公園に出没するホームレスの一員。占いで小銭を稼いで生計を立てる。
……………
★パン屋の作業場にて
ちょっと暗め。
店長 お前……今、なんて言った？（ちょっと戸惑った感じ）
お母さん だから、あなたとはもうやっていけないって言っているのよ！
店長 どういう意味だよ？
お母さん 私、もうあなたのことが信じられない！これ以上、一緒にはいられないわ！
店長 いきなり何なんだよ！俺が何したって言うんだ！（イラつき始める）
お母さん あら、とぼけるつもりなの？
店長 だから、何が言いたいんだ！言いたいことがあるならはっきり言えよ！
お母さん じゃあ、言わせていただくわ！私が知らないと思ったら、大間違いよ！（手帳を取り出しす）
店長 まさか、お前……ちょ、ちょっと待て！
お母さん （手帳を読みながら）私が気付いた最初は４月６日の夜だったわ。次は４月８日。そして、１０日から１４日までは毎晩、５月５日に至っては、朝から出て行ったわね。私に店番を任せたまま、夜まで戻ってこなかったわ。もう、言い逃れなんて させないわよ。あなた、浮気してたんでしょ。
店長 くそ……そこまではっきりばれていたのか……
お母さん 私、もう我慢できないわ。この家を出ていきます。
店長 （母に向かってひたすら土下座）済まなかった！俺が悪かった！早まるな！
お母さん いいえ、さようなら！この、浮気者！
店長 あけみーーー行かないでくれーーー！
店長、がっくり項垂れる。数秒後、照明がつき、店長は立ち上がる
店長 くそう……あけみのやつ……。おれと一緒に、このパン屋をでかくしていくんだと約束したのに、勝手に出ていきやがって！もうういい！俺だけでもやってやる！あいつを見返すんだ！（舞台そでに呼びかける）おい、たまみ、たまみ！
娘 お父さん、何？（辺りを見回して）あれ、お母さんは？
店長 母さんは出て行った。
娘 え……、本当に？本当にお母さん行っちゃったの？まぁ、いつかこんな日が来るんじゃないかとは思っていたけどさ。大体、お父さんが悪いのよ。お母さんの気持ち、全然わかっていないんだもの。
店長 すみません
娘 で、お父さん。これからどうやっていくつもり？
店長 もう、あいつは出て行ったんだ。これからは俺たちでこのパン屋をでかくしていくしかないだろう。あいつを見返すぐらい立派なパン屋にしていくんだ！
娘 ふーん（他人事）。
バイト登場
バイト おはようございまーす。今日もよろしくお願いしまーす。（客席に向かって）あ、俺、バイトのもやっしーでーす。このパン屋でのアルバイト暦は３ヶ月２４日８時間９分４８秒、好きなパンはピロシキ。ピロシキをパンとするかどうかは一先ずおいてお
くことにして。このバイトを始めたきっかけは、毎日おいしいパンを食べたかったからで……
娘 （途中でさえぎって）そんなのどうでもいいわよ。
店長 まぁまぁ……。ところで、もやっしー君。今日は大切な話があるんだ。
バイト 何でしょう、店長。
店長 これから、このパン屋を立派にしていくために、本気で頑張るぞ！テレビや雑誌でガンガン取り上げられるくらいになるんだ！
バイト はいっ！（かなり乗り気）
店長 誰もが注目する、今までとは一味違ったパン屋。名づけて『次世代型パン屋』！
バイト （本気で感動し、店長に拍手）
娘 （冷静に）具体的には？
バイト、店長、硬直
店長 え？
娘 だから、その『次世代型パン屋構想』の具体的な中身を聞いているのよ！
店長 それは……
娘 何？具体的な案は何もないわけ？（店長に詰め寄る）ほんと、大事なところが抜けているんだから！
店長 え……あ……具体的、具体的……具体的な案……（娘の手を取って）一緒に考えてクロワッサン？
娘 （少し固まってから）もう！そんなんだかから、お母さんに逃げられるのよ！
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